柔道・新添左季の『ハイキュー‼』愛が深すぎる「パリ五輪はクロが言っていたごほうびタイム」 (3ページ目)
【あるシーンを練習前に見て号泣】
――新添選手は当然、今は柔道と熱心に向き合っているわけですが、そう変われたきっかけは?
「コロナ禍に入る前くらいに、東京2020五輪の代表争いに加わっていたのですが、その争いの中で"自分と天才の差"というものが身に染みて、心が折れる時期があったんです。私は良くも悪くも、あきらめがいい。
そのあと、パリ五輪に向けて世代が交代した時に、自分がいる階級の中で一番さまざまな経験させてもらえていたのが私だったんです。それで『この経験を活かさなければ』という責任感が芽生えて変わりました。ちょうどそのタイミングで、『ハイキュー!!』と出会った影響も大きかったですね」
――天才といえば、新添選手が好きなもうひとりのキャラクターである影山はまさにそうですね。
「飛雄くんは天才なのに、慢心するどころか、もっともっと上を目指そうと向上心を持っている姿が推せるんです。純粋な憧れもあります。上達することにそこまで執着できるのが才能ですし、私はその才能を持ち合わせているわけではないので。それは自覚していて、自分なりにできる限り頑張る、というスタンスでいます。
とはいえ天才だって、最初から努力していないわけがない。『ハイキュー!!』でも稲荷崎高校の北信介くんが、頑張ってきたからここまできている、といった言葉を口にしていたと思うんですが、『天才たちだってそうなんだから、私も頑張ろう』と考えています」
――その影山が冷静沈着、かつ強烈なパフォーマンスを披露する、作中の烏野高校vs.稲荷崎高校の一戦も好きとのことですが、特に惹かれる場面は?
「日向くんのレシーブでしょうか。最初は下手だったのに、いろんな経験を経て、身につけたレシーブを完璧に繰り出す。アニメで放送された時、それを練習前に見たのですが、泣きながら練習に向かいました。レシーブでこんなに泣かされることがあるのか、って(笑)」
――新添選手にも、そうした競技人生の中で大きなプレーや1本はありますか?
「2年前の世界柔道選手権タシケント大会の混合団体戦の決勝ですね。
私は昔から寝技に対する苦手意識が強くて、高校時代も練習をサボっていました。だから強くならないし、強くないからおもしろくない。『立ち技で勝てばいいじゃん?』くらいの気持ちだったんです。だけど、自衛隊体育学校に所属してから、(同じ所属の)濵田尚里(はまだ・しょうり)さんに感化されました。濵田さんは寝技で東京五輪を制したほどの方で、私も取り組むことにしたのですが......当時はコーチからも『ジュニアレベルだ』なんて言われるほどの技量でした(笑)。
そんなことも経て、2年前の世界柔道選手権の混合団体戦の決勝で大将を務めた時に、3―2とリードして私が勝てば日本が優勝という大事な場面で、締め技(送り襟絞め)の1本で勝ったんです。締め技で勝ったこと自体が初めてでしたし、自分に100点をあげたいくらい。自分へのご褒美として、『ハイキュー!!』を全巻"大人買い"させていただきました(笑)」
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