投資を学ぶ高校野球部生が考えた新規ビジネスのアイデア 起業は可能なのか (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【中古ビジネスの難点は?】

奥野「お、ふたりとも結構いいアイデアを持っているね。

 まず、鈴木君のアイデアに対する先生の感想を言わせてもらうとね、世界に野球の魅力を広めるっていうのは、とても面白いと思う。なぜなら、野球って案外、世界的には普及していないんだよね。アジアだと日本や台湾、韓国など東アジア。あと盛んなのはアメリカと中南米。欧州で野球が盛んだという国はほとんど聞いたことがない。

 確かにある意味、野球ってお金がかかるスポーツだよね。道具もバットやグローブ、ボールといった選手が使用するものに加えて、ベースなどグラウンドで必要なものを揃えるのにもお金がかかる。世界的に普及しているサッカーなんて、極端な言い方をするとボール1個あれば、誰でもどこででも楽しむことができるからね。

 だから、日本で使われた後、それでもまだ使える中古の道具を、海外に輸出して世界に野球文化を根づかせるというのは、いいアイデアのように思えるな。

 ただ、中古品ですら買えないという国もあるかもしれない。鈴木君ならどうする?」

鈴木「そこはサブスクリプションにするとか?」

奥野「さすが、サブスクに馴染んでいる世代らしい考え方だね。確かに金額的に高価な場合、日本国内でもそうだけど、サブスクリプションはひとつのビジネスモデルになりうるかもしれない。

 ただ、敢えて難点を言うと、ハードに使えば、恐らく野球道具の寿命はかなり短くなってしまうかもしれないということかな。日本の野球人口も減っていることからすると、今後は中古の道具があまりたくさん出てこないかもしれないという問題もある。中古道具をどのようにして少しでも多く集めることができるか、そこを検討する必要があるかもね。

 次は由紀さんが考えたビジネスだけど、これは結構あり得ると思うよ。野球選手の場合、20代の後半には選手生命を終えてしまうケースも多い。20代後半で仕事を失い、それから何をするのか。プロアスリートは現役時代、1日24時間、競技のことだけを考えて生きてきたから、いざ現役を引退するとなると、もう何をすればいいのかわからなくなってしまうというケースも多いという。挙句の果てに、誰かに誘われて現役時代の人気を利用して飲食店を開店したものの、まったく商売が成り立たなくて、逆に借金を背負ってしまった......などという話をよく聞くよね。

大事なのは、『世の中一般のお金に関する常識を教える』ことかもしれないね」

由紀「年俸1億円の選手が引退して、いきなり普通の会社員になるって、ギャップが大きいんでしょうね」

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