「野球に関わる仕事に就くためには何が必要?」投資を学ぶ高校野球部生が考えた (4ページ目)

  • ,鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【「競争優位」とは?】

鈴木「問題は、どこかの会社に飛び込んだとして、そこで何をするべきなのか、ということですね」
由紀「どんなことをすれば、自分の夢に一歩近づけるのでしょうか?」

奥野「もし僕が企業の人事部の人だったら、鈴木君や由紀さんが野球好きで、野球に関わる仕事をしていきたいという熱意を買いたいと思う。だけど実は世の中には、鈴木君や由紀さんよりも野球が好きな人、野球に関するさまざまな知識を持っている人、あるいは実際にプレーさせたらもっと上手な人は、ごまんといるよね。

 つまり『野球が好きです』ということだけでは、何の付加価値にもならないし、競争優位にもならないということを、まず覚えておいたほうがいいと思う。

 ではどうすればいいのかということなんだけど、もうひとつの軸をつくることだと思うんだ。

 たとえば、野球の選手の肉体をサポートする仕事に就きたいと思ってトレーナーの資格を取ったとしよう。でも、『スポーツ選手をケアするトレーナー』は大勢いると思うんだ。そこにも厳しい競争があるはず。だけど、たとえば『語学が堪能な野球のトレーナー』となると、おそらく人数は大幅に減るんだよ。これが『競争優位性』というやつだね。

 ダブルキャリアと言って、たとえば医師免許と弁護士資格を両方持っているという人がいるんだけど、それと同じ。他に得意技を持っておくことは大事だと思う。

 その得意技としてお勧めなのは、会計と統計、そしてプログラミングの3つかな。もちろん語学は当たり前の話で、そのうえで、これら3つのうちどれかひとつを身につけておけば、きっと引く手あまたのトレーナーになれる。

 どんな会社でもいいから、まず飛び込んでみて、『自分は野球が大好きなんだ』というアピールを上司の前でしながら、英語の勉強はもちろん、会計と統計、プログラミングのいずれかに精通する。そうすれば、きっと望む仕事に就けるような気がするな」

奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は3000億円超を誇る。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。『マンガでわかるお金を増やす思考法』が発売中。

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