恵俊彰が書いた早稲田大学大学院での4万7000字の論文「情報番組の新たな可能性に気づいた」

  • 池田鉄平●取材・文 text by Ikeda Teppei
  • 川野結李歌●撮影 photo by Kawano Yurika

 恵俊彰さんが、60歳を前にして「新たに勉強したい」という思いから入学した早稲田大学大学院スポーツ科学研究科。そこには、元ラグビー日本代表の五郎丸歩さん、元サッカー日本代表の川口能活さん、福西崇史さんなど錚々たる顔ぶれがそろっていた。それぞれがスポーツの経験を活かして研究と勉強に励む日々。そのなかで恵さんが見つけた研究テーマとは?

 後編では、恵さんが修士論文を書いた「情報番組がスポーツを伝えるにあたっての大きな役割」についての裏側や大学院を通じて得た、かけがえのない思いを語ってもらった。

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恵俊彰さんインタビュー
後編
前編はこちらから>>学生生活は「週4日、18時から21時半までの授業。桑田佳祐さんを歌いながら帰る日々」


修士論文のテーマは「情報番組がスポーツを伝える役割」だと話す恵俊彰さん修士論文のテーマは「情報番組がスポーツを伝える役割」だと話す恵俊彰さんこの記事に関連する写真を見る――「情報番組がスポーツを伝える役割」というのが研究テーマだったそうですが、恵さんのなかでどんな気づきがあったのでしょうか?

 研究にあたって、13年間の『ひるおび』で放送されたスポーツの話題について分析しました。全体で3335回放送しているんですが、そのなかでスポーツのことを放送したのが862回。割合にすると、25パーセントぐらいで4日に1回はスポーツの話題を伝えている。1週間に5回放送があるので週1回は取り上げている計算です。

 スポーツ番組は、スポーツ好きが見たい番組を作るじゃないですか。一方で情報番組は、政治、経済、芸能と全部やるんですね。そのなかでスポーツを取り上げる以上、 やっぱり数字を取らなきゃいけない。

 今回、論文にして「スポーツファンである人に伝える番組」と「スポーツファンではない人たちに伝える番組」で大前提が違うことに気づきました。

 きっかけは、情報番組、スポーツ番組、報道番組を作る約300人に行なったアンケートの結果です。「情報番組がスポーツを伝えることに期待するものはなんですか?」と、Googleフォームで作ってスタッフ陣に聞いたんです。するとみんな、「結果よりも人柄やエピソードを伝えてほしい」と書いていました。

 その典型的な例が、大谷翔平選手が MVPを獲った2021年シーズンのエピソードです。試合中に折れたバットを拾ったりとか、ゴミをポケットに入れたりとか、「なんて立派なんだ大谷さん」といったことですね。

 しかし、それはカタールワールドカップで伝え方が決定的に変わりました。

――「ひるおび」では、ワールドカップ特集をよくやっていた印象があります。

 11月20日から本大会が始まるので、サッカー解説者の福田正博さんを呼んでワールドカップのコーナーがスタートしました。でもワールドカップは、使用できる映像に制限があるから、「三笘の1ミリ」も一生懸命ボードを作って放送していました。

 最初は従来のやり方で、人柄や出来事の偉大さについて専門家を呼んで伝えていたのに、日本が勝ち進むにつれて、"試合内容"を伝えるようになっていったんです。

「この1点はどうやってとられたんだろう」、「選手がどんなふうにフォーメーションを変更したか」などを解説していたら、それが板についてきて視聴率もよくて。だんだんサッカー番組に負けないような専門家たちを呼んだりと、専門性が高い番組に変わってきて、結局、21日間ワールドカップ特集をやり続けたんです。

――情報番組がスポーツ番組化していったと。

 今までの人柄やエピソードを伝えていた情報番組の役割から、さらに1歩踏み込み始めているじゃないかなと思います。その背景には、情報番組は枠が長いからというのがあります。スポーツ番組は4時間もないから伝えることが難しいじゃないですか。そうすると、どうしても映像で伝えるものとか、取材してきたものが中心になる。でも、「ひるおび」は局に使用できる映像が少なくても、世の中が反応している話題については、積極的に放送していける可能性に気づいたと思いますね。

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