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高校生の投資教育はなぜ始まったのか。ナイキの厚底シューズから見えるもの (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

ナイキのシューズが高いのは理由がある

「お金って、『工場で汗水たらして働いた対価として給料をもらい、それを使って生活する』というくらいの概念でしか捉えていない人が大勢いるんだけど、そうじゃない。工場で働いているのは、そこで何か商品を組み立てているからでしょ。なぜ商品を組み立てているのかというと、一方にそれを買いたい人がいるからさ。

 その商品を手にした人たちは、きっと『ああ、これを手に入れられてよかった』と満足するだろうし、実際に使ってみて、その便利さに感動するかも知れない。そしてきっと『ありがとう』っていう感謝の気持ちを、その商品を作った人たちに対して抱くはずなんだ。だから、その商品を買うために払ったお金は『ありがとう』の印ってことになる。

 そうやって、大勢の人たちが喜んでくれる商品やサービスを提供できた会社には、どんどんありがとうの印が溜まっていく。これが『売上』であり『利益』になる。

 たくさん利益を上げていると、『きっとあの会社は良からぬことをやっているに違いない』などと言う人もいるんだけど、それは大きな勘違い。利益をたくさん上げているということは、それだけお客様や社会の課題をたくさん解決して、感謝されているからにほかならない。しかも、その利益が毎年どんどん増えている会社は、持続的に社会の課題・問題を解決していることになる。実は利益って、とっても偉大なものなんだ。

 スポーツ用品メーカーのナイキが出している、『ヴェイパーフライ』というランニングシューズ、あるでしょ。お値段3万円。高いよねー。普通のスニーカーだったら、そんな値段にはなりません。

 おそらく10年くらい前のランニングシューズといえば、軽くて、靴底が薄いものが一般的だったけど、『ヴェイパーフライ』は昔のランニングシューズだったら考えられないくらい厚底です。まさに常識を覆したと言っても過言ではないでしょう。

 余談だけど、『ヴェイパーフライ』の分厚い靴底には、カーボンプレートが入っていて、これがランナーを前へ前へと進める推進力の増強と、疲労の軽減を両立させるんだ。ランナーからすれば、自分の記録はどんどん更新できるし、疲労も軽減されるということで、待ちに待ったランニングシューズだったというわけ。

 ナイキは『ヴェイパーフライ』を通じて、まさにランナーの課題を解決したんだね。だから『ヴェイパーフライ』は1足3万円という強気の価格設定だったにもかかわらず、世界中で人気商品となり、ナイキの売上に貢献したんだよ」

鈴木「先生、ますますお金が好きになりました」
由紀「でも実際にお金を稼ぐのって、大変なことなんじゃないかしら」

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