【イングランド】マンチーニもシティのやり方にすぐにはなじめなかった

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by GettyImages

開幕から3試合連続ゴールをあげるなど、今季も好調を維持しているテベス開幕から3試合連続ゴールをあげるなど、今季も好調を維持しているテベス【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】マンチェスター・シティの冒険(3)

 トレーニングセンターの食堂の近くに、パソコンに埋め尽くされたむさ苦しい部屋がある。10人のアナリストがフットボール界に古くからある格言が正しいかどうかを、冷徹なデータに照らして調べている。

 4年ほど前、シティがコーナーキックから得点をあげられずにいたとき、ガビン・フレイグの率いる分析チームがデータを調べた。彼らはさまざまなリーグの何シーズンにもわたるコーナーキックを計400本以上見て、最も得点に結びつくキックはゴールに向かって巻いて入っていくボールだと結論づけた。

 2009年にロベルト・マンチーニがシティの監督になると、分析チームはこのコーナーキックの話を彼に伝えた。マンチーニはおとなしく聞いていた。しかし彼は、ゴールから離れていくボールを直感的に好んだ。マンチーニもシティのやり方にすぐにはなじめなかった。

 ところが1年ほど前、シティがまたもコーナーキックをうまく使えずにいたとき、コーチのデイビッド・プラットが戦略分析チームの部屋に顔を出した。フレイグはプラットにコーナーキックの分析結果を伝えた。その後の細かな経緯をフレイグは聞いていないが、気がつけばシティはコーナーからゴールに巻いて入っていくボールを蹴るようになっていた。昨シーズンのシティがコーナーキックからあげた得点は、プレミアリーグ最多の15点。そのうち10点は、ゴールに向かっていくボールからのものだった。

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