萩野公介、衝撃の五輪デビュー。「怪物」「超人」との壮絶な戦い

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

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PLAYBACK! オリンピック名勝負―――蘇る記憶 第30回

スポーツファンの興奮と感動を生み出す祭典・オリンピック。この連載では、テレビにかじりついて応援した、あの時の名シーン、名勝負を振り返ります。

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 2012年ロンドン五輪で、日本の競泳陣は金メダルこそなかったが、11個ものメダルを獲得した。これは、1934年ロサンゼルス五輪の12個に次ぐ、2番目の記録だ(36年ベルリン五輪と同数)。そして、その勢いをつけたのが、競技初日に登場した栃木県作新学院高校3年生の17歳、萩野公介だった。

ロンドン五輪競泳男子400m個人メドレーで、銅メダルを獲得した萩野公介ロンドン五輪競泳男子400m個人メドレーで、銅メダルを獲得した萩野公介 小学校で背泳ぎ3種目の学童記録を塗り替えた萩野は、中学に進むと自由形2種目と背泳ぎ3種目、個人メドレー2種目で記録を更新した期待の逸材だった。高校1年生になったばかりの2010年には、4月の日本選手権400m個人メドレーで2位になり、パンパシフィック選手権にも出場した。11年は、東日本大震災の影響で中止になった日本選手権の代替大会の国際大会代表選手選考会に出場するはずが、直前に高熱が出て棄権。世界選手権を経験する機会を逸していた。

 だが、日本では前例がなかったマルチスイマーを目指し、前田覚コーチの下ハードな練習を積み上げてきた大器は、五輪イヤーに大きく羽ばたいた。

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