2019.07.27

松田丈志が考察。瀬戸大也と渡辺一平が
狙って勝つためにやるべきこと

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 200m個人メドレー決勝に進出した選手には、瀬戸よりも速い1分55秒台の自己ベストを持った選手が3人もいた。しかしレース本番では、それらの選手が自己記録よりタイムを落とす中、瀬戸は逆に自己記録を0秒55更新。この勝利を「ご褒美みたいなもの」と瀬戸は語ったが、ここまでに行なってきた準備の量と緻密さ、さらに勝負強さがあったからだと思う。

 やれることをすべて実践し、結果を残している瀬戸。最終日(7月28日)の400m個人メドレーでは、王座復活と個人メドレー2冠をかけて再びライバルたちと激突する。

 翌6日目には、今大会で「もっともハイレベル」と言ってもいい戦いが繰り広げられた。

 男子200m平泳ぎ決勝、渡辺一平が2分6秒73で前回大会に続く銅メダルを獲得した。渡辺は同種目の世界記録保持者(2分6秒67)だが、前日の準決勝でオーストラリアのマシュー・ウィルソンが渡辺と同タイムの世界タイ記録をマーク。さらに最大のライバルであるロシアのアントン・チュプコフも、準決勝で2分6秒83を出して好調さをアピールしていた。

男子200m平泳ぎで銅メダルを獲得した渡辺一平 ウィルソンは先行型で、チュプコフは極端な後半型。とくにチュプコフは最後の50mが極端に速い。渡辺もどちらかといえば後半が強いのだが、チュプコフはその渡辺より最後の50mだけで1秒以上タイムが速いのだ。

 その「チュプコフ対策」として、渡辺はさまざまなレースパターンを試してきた。渡辺と、渡辺を指導する奥野景介コーチが導き出した答えは、渡辺の強みである「スピードを維持し続ける能力」を生かし、スタートからゴールまでを平均的に速く泳ぐレースパターンだった。

 つまり、ラスト50mが強いチュプコフに対して、150mまででリードを奪って逃げきる作戦だ。実際に決勝のレースでも、渡辺は150mをチュプコフより0秒65速い1分33秒58で、ウィルソンに次ぐ2番手でターンした。

 しかし残り15m付近でチュプコフにかわされ、3着でゴール。チュプコフはラスト50mで31秒89という驚異的なラップを刻み、2分6秒12の世界新記録で優勝した。上位3人が2分6秒台というハイレベルで見応えのあるレースだった。

 世界記録更新と金メダルを狙ったからこそ、渡辺はレース後に「悔しさ80パーセント」と語ったが、一方で充実感も口にした。

「銅メダルなんですけど、今僕ができる最高のパフォーマンスで獲った銅メダルなんじゃないかなと思います。自己ベストではないですけど、しっかりと(2分)6秒台を出せたというのも価値がある。レースプランも勝負にこだわるのではなくて、200m平泳ぎをいかに速く泳ぐかを考えながらレースができた。2年前とは違う成長した自分を表現できたのではないかなと思います」