池江璃花子が再スタート。世界ジュニアで明暗を分けた2レースの違い (2ページ目)

  • 松田丈志●文・写真 text & photo by Matsuda Takeshi

 レース後の悔しそうな表情も印象的だったが、インタビューで彼女から出た言葉は意外なものだった。

「正直100m自由形が終わって今はホッとしています。」

 なぜだか、わからなかった。

 池江はレース前から不安を感じていたという。その理由は2つあった。彼女自身の言葉で言えば、ひとつ目は「私はまだ国際大会の自由形のレースでベストを出したことがないんです」。ふたつ目は「エントリータイムが2位だった選手とのタイム差があまりなくて、レース前に負けちゃうかもしれないと一瞬思ってしまいました」

 そんな不安を感じていたのかと驚いた。「自由形」で世界と戦う難しさを感じているのだなと思った。池江は昨年のリオ五輪では100mバタフライ決勝で自己ベストを更新している。だから、メンタル的に本番で力を出せない選手でもないし、コンディションを合わせられない選手でもない。むしろ、それができる選手だ。

 しかし、なぜ今回そんな不安を抱いたのか?

 それは池江がレース前に過去の結果と数字にとらわれて、これからやるべき自分の「泳ぎ」に集中し切れなかったからだと思う。

 まだ国際大会の自由形で結果を出せたことがないと言っていたが、それはすべて過去のレース結果だ。さらにエントリータイムを見て負けるかもしれないと思ったというが、「エントリータイム」は過去の数字で、「負けるかもしれない」は未来の想像だ。100m自由形決勝前の池江は過去の結果と数字にとらわれて、自分の頭の中で未来を想像したのだろう。未来を想像することは、トレーニングの段階やレースのプランを考える時は重要だ。過去の自分の結果や数字から課題を見つけ出して、改善していく。

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