シーズンを出遅れたプロスイマー萩野公介。「今の体で戦うだけ」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 二宮渉●撮影 photo by Ninomiya Wataru

 萩野は150mターンの時点でも5位。トップの江原からは1秒08離されていたが、そこから追い上げを開始すると最後は0秒18逆転し、1分47秒29でこの種目の5連覇を達成した。しかし記録自体は、決勝で2位以内に入った者が突破していれば即代表入りが決まる標準記録に0秒63届かなかった。

「予選も思うような泳ぎができなかったし、決勝もフォーム、身体の動き共によくなかったです。最終的にはそこはあまり気にしないで根本的なことだけを気にして泳ごうとしたけど、手さぐり状態だったので厳しかったですね。ウォーミングアップでひとつ直したらそれでよくなるという感じではないし、時間もなかったので、決勝では要点だけ押さえてレース展開や力の配分に気をつけて泳ごうと思いました」

 平井コーチも、レースをこう振り返る。

「昨日勝っていれば今日も違ったと思いますが、悪いとこ探したみたいになっていましたね。萩野には時々あることで、左手のストロークを右手に比べると深いところでかいてしまう、動きのバランスの悪さが出てきていた。そこを注意して丁寧に泳いでいればある程度の記録も出るんですけど、そんなことをしていたら負けてしまう。それでもキックだけは動いていたから、『最後にキックを活かすようなレースをしよう』と話したんです。

 それでちょっと消極的なレースになってしまったと思いますが、こういう時はもがきながらでも少しずつ自分の中のいい部分を見つけていくしかない」

4 / 5

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る