不遇な時代を乗り越えて。
金藤理絵「金メダル」の準備はできていた

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by JMPA

 表彰台の中央で金メダルを首にかけ、笑顔を見せていた金藤理絵は、表彰台を降りて、視線を観客席に向け、チームメイトが大喜びをする姿を見つけると、途端にポロポロと涙を流し始めた。

大きな期待に応えて見事金メダルを獲得した金藤理絵大きな期待に応えて見事金メダルを獲得した金藤理絵「チームメイトや日本人だけでなく、ほとんどの人が国に関係なく祝福の声をかけてくれて。そういうことが今までなかったので、本当にうれしいなと思いました。それに初めて表彰台の上で自分だけの『君が代』を聞くことができて、ちょっと涙が出そうになったんですが、その時は出なくて......。そのぶん最後の最後に、チームのみんなが喜んでくれているのを見て、全部出てしまったという感じです」

 8月11日の競泳・女子200m平泳ぎ決勝。タッチ板に手を付いて電光掲示板を見上げた時、金藤は複雑な気持ちになったという。

「信じられなかったというか、タイム自体は2分20秒30と平凡で、自分のベストより0秒6も落ちたタイムだったので、こんな記録で優勝していいのかなと思って......。表示された自分のタイムと順位を見て『ホントに一番なのかな?』と思っていたんです。だからうれしい気持ちと悔しい気持ちがあって、自分でもよく分からなかったんです」

 しかし、そんな複雑な気持ちも、チームメイトが喜ぶ姿を見ると一瞬で吹き飛んだのだった。

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