【水泳】渡部香生子「今の自分がいるのもたぶん、五輪があったからだと思う」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Igarashi Kazuhiro

 五輪後は、9月の国体の200m平泳ぎで世界記録を出した山口観弘と「これからは泳ぎも考えていかなければいけないね」と話をしてから“もう少し他の人の泳ぎを見たりしなければ”と思うようになったという。

「最近は平泳ぎがわかってきたというか、けっこう自分で泳ぎをコントロール出来るようになって、いい感じでやれているんです。そういう自分が今いるのもたぶん、五輪があったからだと思うので。結果は良くなかったけど、これからも水泳をやるためには本当にいい経験が出来たと思っているんです。それに聡美さんの活躍で目指すものが出来たというか。改めて『私もああなりたい』と思えました」

 4年後のリオデジャネイロ五輪のことは、まだたまに、ほんのちょっとだけ考える程度だと笑う。それでも渡部は、12月の世界短水路の100m個人メドレー予選で59秒74の短水路日本記録を出すなど、次への一歩を歩みだしている。麻績コーチは「あの日本記録は狙って出した記録。平泳ぎを(この先)やらないというのではないが、元々やっている200m個人メドレーでもいけるところまでいきたい」と話す。

「麻績コーチはすごいプラス思考で、個人メドレーでもいきなり日本新とか言うけど、私は少しずつ成長していきたいんです。今は平泳ぎが一番世界に近いかなと思っているけど、昔からやっている個人メドレーも徐々に強くなっていって、両方で五輪へいけたらいいなと思うけど、まだ今はちょっと……」

 そう言ってはにかむ渡部は、ロンドンで注目されたメドレーリレーについて「100mはけっこう難しいし、聡美さんもいるから」と言いながらも「メドレーリレーにもいつかは出てみたいですね」という。「じゃあ次の五輪は平泳ぎと個人メドレー、メドレーリレーを目標に?」と質問すると「それってけっこう欲張りですね」と、大きな声で笑った。

「でも私、かなりの負けず嫌いなんですよ。小学生のときは走るのが好きだったからリレーの選手にどうしてもなりたくて、決めるときにガチでいって選手になれたんです。自分でもけっこう勝負強いと思いますね」

 まだおっとりとした雰囲気が目立つ渡部。彼女が心の中に秘めている負けん気を本気で出したときこそが、再び大きく成長する時なのかもしれない。

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