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【箱根駅伝2026】早稲田大・山口智規が体現した「1500mから20km超まで」の両立 「俺の2区は評価されていないな、と......(笑)」の真意とは (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Satoshi Wada

【「井の中の蛙では、目指すところも明確にならない」】

 駅伝でも、出雲は2区で初の区間賞を獲得し9人抜きの活躍を見せた。全日本は、急遽長距離区間に回ったため、納得のいくパフォーマンスとはいかなかったが、それでも7区4位にまとめた。

 そして、箱根駅伝2区での活躍だ。1500mから20km超まで、今シーズンは高いレベルで結果を残した。

「レース前にどういうコンディションであれば自分は走れるのか。そのためには、どんな練習が必要なのか。それが4年目にしてやっとわかってきました」

 紆余曲折がありながらも、ようやく自分のスタイルを確立させつつあった。

 強豪校の選手は月間走行距離が1000kmを超えることも珍しくはない時代にあって、山口の場合、この1年間で最も走り込んだ月でも月間700km程度だったという。それも、箱根前の12月だけだ。

「めちゃめちゃ頑張って700kmだったので、僕が千何百kmも走ったら死んじゃいます。

 でも、僕のこのシーズンの取り組みに、もっと価値を見出すべきですよ。だって、7月に日本選手権の1500mで準優勝して、その半年後に箱根2区で1時間5分台で走っているんですから。両立できることを示すつもりでやってきて、ある程度結果を残せてよかったなと思いますけど、なかなか俺の2区は評価されていないな、と......(笑)。そこに価値を見出していかないと、箱根駅伝が悪になる一方ですよ」

 山口は自虐を交えながらも、こう語気を強めた。

 早大が優勝していればまた事情は変わっていたかもしれないが、確かに、今回の箱根駅伝では5区の黒田朝日(青学大4年)の爆走等があって、山口の活躍は少し霞んでしまったのも事実だ。

 とはいえ、山口が自身の主張をより強固なものにするには、むしろこれからが大事だろう。早大卒業後は、SGホールディングスに所属しつつも、昨年遠征したメルボルン・トラッククラブを練習の拠点とすることを希望している。

「メルボルンでは一番弱かったんで、自分が。(5000m)12分台の選手とまだ力の差があると感じました。日本には12分台のノウハウがないので未知というのもありますが、もう一回オーストラリアに行って、またスタートを切って自分の力を試したいです。外に出ることですごく視野が広がるのは間違いないですし、井の中の蛙では、目指すところも明確にならないですから」

 自身の選択が厳しい道であることは重々承知している。それでも、強くなるために、その道を進んでいく。

 今はまだ達せずにいるが、山口にとって5000m12分台は通過点に過ぎない。まず目指すは2年後のロサンゼルス五輪。その舞台に立つだけでなく、世界と堂々と戦うつもりだ。志は高い。

著者プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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