【箱根駅伝2026】「シン・山の神」黒田朝日(青山学院大)の衝撃走&区間新記録は不滅か? それとも未来のスタンダードになるのか? (3ページ目)
【坂と平地の異なる資質が最高の形でブレンド】
そして特筆すべきは、上りだけではなく、下り、そして平地での走力である。黒田の区間新を生み出したのは、最高点を超えてからの下りでのギアの切り替え、最後の平地でのスピードも大いに貢献している。
早大の花田監督は「工藤は下りがうまいので、最高点までを耐えられればと思っていました」と話したが、元箱根からフィニッシュ地点までのセクションでも、黒田のほうが24秒速かった。往路終了時点では黒田が18秒先にフィニッシュしたわけで、下り、平地での容赦のない走りが早稲田に与えたダメージは大きかった。花田監督は言う。
「競る形でフィニッシュしていれば、復路のスタートはまた違った形になったでしょうから、最後に突き放されたのは大きかったと思います」
黒田は11月22日に行なわれたMARCH対抗戦の10000mで、27分37秒62の自己ベストをマークしており、12月の取材でも「地力がついているのは自覚しています」と話していた。日ごろの練習で培った地力が最後のセクションでも発揮されたことになる。
フィニッシュテープを切る時も、余裕綽々(しゃくしゃく)。まだまだ走れそうな雰囲気だった。
個人的には、1時間07分16秒という記録は、しばらく破られることはないと思う。
柏原を上回る激坂区間での圧倒的な強さ、そして絶対的な走力が支える下り、平地でのスピード。黒田には5区を上るクライマーに必要な要素が、最高の形でブレンドされていた。
永久不滅の記録に思えるのだが――。
しかし、箱根駅伝はわからない。昨年、6区で青学大の野村昭夢(現住友電工)が56分台の前代未聞の記録をマークした時、しばらくこの記録は破られないと思われた。ところが今回、小池莉希(創価大3年)が56分48秒で走り、あと1秒にまで迫った。
常識が覆ると、それに続く若者が登場する。だが、黒田朝日の記録だけは......いや、未来のことは誰にもわからない。
著者プロフィール
生島 淳 (いくしま・じゅん)
スポーツジャーナリスト。1967年宮城県気仙沼市生まれ。早稲田大学卒業後、博報堂に入社。勤務しながら執筆を始め、1999年に独立。ラグビーW杯、五輪ともに7度の取材経験を誇る一方、歌舞伎、講談では神田伯山など、伝統芸能の原稿も手掛ける。最新刊に「箱根駅伝に魅せられて」(角川新書)。その他に「箱根駅伝ナイン・ストーリーズ」(文春文庫)、「エディー・ジョーンズとの対話 コーチングとは信じること」(文藝春秋)など。Xアカウント @meganedo
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