【箱根駅伝2026】「シン・山の神」黒田朝日(青山学院大)の衝撃走&区間新記録は不滅か? それとも未来のスタンダードになるのか? (2ページ目)
【「大平台―芦ノ湯」間の驚異的なスプリット】
小田原中継所でたすきを受けてから、3.5km地点の函嶺洞門のチェックポイントまでは平地。表を見ると、このセクションでは工藤がいちばん速いタイムを記録している。
これはレース状況が影響しており、2位でたすきを受けた工藤は、1分12秒先を行く中央大の柴田大地(3年)を追わざるを得なかった。レース後、早稲田の花田勝彦監督は、
「目に見えない相手を追うことになったので、とりあえず突っ込むしかなかったと思います」
と話していた。往路優勝を狙う工藤にとって、やや突っ込み気味に入ったため、若林、黒田よりも速い入りとなったとみる。
興味深いのは、若林と黒田のタイムがほぼ一緒だということ。この時点では、若林の記録をひとつの目安にしていたことがうかがえる。
しかし、上りが始まり、7.0kmの大平台のヘアピンカーブから、11.7kmの小涌園前にかけて、黒田の勢いが止まらなくなる。
黒田はこのセクションだけで工藤との差を55秒縮め、若林よりも36秒速い。大平台周辺の斜度は8パーセント以上(100m進むと8m以上高くなる計算)だから、黒田は「激坂」区間で若林、工藤といった山上り巧者をはるかに上回る走りを見せたことになる。
ここからクライマーたちは最高点を目指して駆け上がっていくが、5区を経験した選手たちの言葉を借りれば、
「いつまで上りが続くか先が見えなくなってきます」「本当に苦しくて、手を使って上りたくなります」
というくらい、苦しいセクションになる。しかし、ここでも黒田は軽やかさを失わない。
小涌園前から15.8kmの芦ノ湯、この4kmあまりの間に若林よりも34秒速く、工藤よりも57秒速い。上れば上るほど、黒田はぐんぐん差を詰めていった。
この時点で「シン・山の神」誕生は決定的となっていた。驚異的なペースと言うしかない。
大平台から芦ノ湯までの8.8kmのスプリットを見る限り、この黒田の走りが今後のスタンダードになっていくとは考えにくいのではないか。
なぜなら、二代目・山の神である柏原竜二の記録と比較しても、黒田の上りがけた外れの強さだったことがわかるからだ。
柏原が走っていた時代、5区はたすきを受けてから平地を走るセクションが長く、23.4kmと今よりも2.6km長かった。つまり、途中セクションのタイムを単純比較することはできないわけだが、それを重々承知のうえで調べてみた。
柏原のタイムは2012年の4年生の時、自身が持つ区間記録を更新した時のものを採用してみると、
「大平台(9.4km)29分34秒→芦ノ湯(18.2㎞)1時間01分15秒」
柏原はこの8.8kmを31分41秒でカバーしているが、黒田はどうだったか。
30分41秒だった。
速い。速すぎる。
このセクションだけを比較すると、黒田はちょうど1分、柏原を上回っていた。
山の神を1分も! なるほど、「シン・山の神」と呼ばれることはある。
黒田朝日は史上最強のクライマーだったのだ。
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