検索

【大学駅伝】早稲田大ルーキー・鈴木琉胤が快走連発の衝撃デビュー 「狙った試合は絶対に外さない」 (2ページ目)

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

【2028年ロス五輪へ向け日々研鑽】

 さらなる衝撃を残したのが、5月11日の関東インカレだ。最終日の5000mに出場した鈴木は、留学生が相手でも攻めのレースを貫き、序盤から先頭を走った。

 1000m過ぎに先頭に立った山梨学院大のジェームス・ムトゥクに激しい揺さぶりをかけられたが、負けじと食い下がった。

「ムトゥクさんがこっちをちらっと見て抜いていったんです。"ついてこい"っていう挑戦状だと思って、食らいつきました。ペースの上げ下げがすごくて、メルボルンよりもきつかったです」

 このレースでは、鈴木のルーキーらしからぬ冷静さも光った。残り1000mを切ってムトゥクとヴィクター・キムタイ(城西大)に後れをとり、一時は勝負あったかに思われた。だが、「あのままいくと、自分の足が持たなかったので、1回落としました」と計算のうえだった。花田監督の「前を追えるぞ」という声を聞いて再びペースアップすると、最後はふたりの留学生とラストスパート勝負に持ち込んだ。

 結局、キムタイにわずかに届かず2位に終わったが、大胆さと冷静さを持ち合わせた、非凡さを発揮した。

 すでに大学長距離界で秀でた存在だが、鈴木自身は現状をいたって冷静に受け止めている。

「いろんな声はいただくんですけど、そういうのは取り払って、チャレンジャーという気持ちで、一つひとつ挑んでいけたらなと思います」と謙虚な姿勢を貫く。

 今季の目標を問われても「そこまで数字にはこだわっていない」と言う。鈴木が見据えるのは大学4年目にあるロサンゼルス五輪。そこに向けて一つひとつ積み重ねていく覚悟だ。

「大学という新しい環境のなかで、自分がやってきたことも少しずつ変わっていきますし、慣れない環境でもあるので、1年目は環境に適応し、今の力を維持できたらなというふうに思っています。1、2年目は"溜め"の時期として、3年目でしっかりと記録を出して、4年目はオリンピックを目指したいと思っています。5000m12分台や10000m26分台を目指しつつ、世界で戦える選手になりたいです」

 こう話すように、長いスパンで、自身のキャリア形成を考えている。

 実は5月中旬の時点で、今秋開催の東京世界選手権に向けたワールドランキングで5000mの日本人最上位に付けているのが鈴木だ。もちろん、その順位は今後大きく変動することが予想されるが、鈴木にも世界選手権のスタートラインに立つチャンスがある。それでも、鈴木は大きなことを口にすることはない。今季のトラックシーズンはまず、日本代表に選ばれたワールドユニバーシティーゲームズに全力を注ぐつもりでいる。

「日本代表に選んでいただいた以上、そこでしっかりと結果を出して、日本の陸上界を少しでもレベルアップしていければなと思います」

 こう決意を固めている。

つづく

著者プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

2 / 2

キーワード

このページのトップに戻る