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箱根駅伝「山の名探偵」から「マラソンの名探偵」へ? 早大・工藤慎作が目指す総合優勝とロス五輪マラソン代表

  • 和田悟志●取材・文・写真 text & photo by Wada Satoshi

今年の箱根駅伝5区で、早大・工藤は人気漫画のアクションのマネをしながらフィニッシュした photo by Wada Satoshi今年の箱根駅伝5区で、早大・工藤は人気漫画のアクションのマネをしながらフィニッシュした photo by Wada Satoshiこの記事に関連する写真を見る

2年連続の好走で、箱根駅伝5区の代名詞的選手となった早稲田大の工藤慎作(2年)。眼鏡をかけた風貌やその名前から人気漫画の主人公になぞらえつけられた「山の名探偵」の愛称は、箱根ファンにも定着してきたが、工藤自身が目指しているのは山を極めることだけではない。

来シーズン、早大として15年ぶりの箱根総合優勝はもちろん、2028年のロサンゼルス五輪マラソン代表入りを明確な目標に掲げ、走り続けている。

【「工藤は1=1.1〜1.2ぐらい出せる選手」】

 今年の箱根駅伝で一気に名を上げた選手のひとりが、早稲田大学の工藤慎作(2年)だろう。

 人気漫画『名探偵コナン』に由来する"山の名探偵"のニックネームは、Xで「箱根駅伝」を差し置いて日本のトレンド1位を獲得(往路が行なわれた1月2日)。それほど大きな話題となった。

 そのキャッチーなニックネームに負けないほど、箱根路で見せたパフォーマンスもインパクトは大きかった。

 2年連続で箱根駅伝の5区"山上り"を任された工藤は、区間2位と好走。

「誰かに抜かされようと、誰を抜こうと、自分のリズムでいこうと決めていた」

 このように振り返るが、駒澤大の山川拓馬(3年)、國學院大の高山豪起(3年)といった実績のあるランナーを抜いて、チーム順位を6位から3位に押し上げる活躍を見せた。

 記録も、区間新記録を打ち立てた青山学院大の若林宏樹(4年)には及ばなかったものの、5区歴代3位となる1時間09分31秒をマークした。

「70分前後を想定していました。正直、それすら厳しいかなと思っていたのですが、想定よりもかなりよいタイムで走ることができました。100点以上の走りだったと思います」

 1年生だった前回大会も区間6位と好走。その時の記録は1時間12分12秒だった。今季は明らかに走力をつけており、1年前の記録を大幅に上回る予想はついていたが、工藤自身の想像をはるかに上回った。

 箱根の5区では70分を想定した1kmごとのラップを途中までは刻んでいたが、途中からはあまり気にせずに走ったという。最高点付近の芦之湯(15.8km)を超えて元箱根(18.7km)までの下りは、若林よりも速く駆け抜けた。実は、工藤は上りだけでなく下りも速かった。

 いや、起伏があるコースに限らず、平地でも力強い走りを見せるのが今の工藤だ。

 ルーキーイヤーの工藤は、出雲駅伝、全日本大学駅伝と本来の調子ではなかったが、箱根での好走をきっかけに本来の調子を取り戻し、3月の日本学生ハーフで3位と活躍した。そして、2年目の今季、大きな飛躍を遂げた。

 出雲ではアンカーを担い、区間2位と好走。篠原倖太朗(駒澤大4年)や太田蒼生(青学大4年)といった大学長距離界を代表する選手に区間タイムで勝利した。さらに全日本大学駅伝でもアンカーを任され、区間3位と快走。他大学のエース格と十分に勝負できる力があることを示した。そして、箱根駅伝では2年連続の山上りで圧巻の走りを見せた。

「"1=1"っていうのをチームテーマにしていますが、工藤は1=1.1〜1.2ぐらい出せる選手」

 花田勝彦・早大駅伝監督は工藤の強さについてこう評する。

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著者プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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