箱根駅伝2025 優秀な主務がいるチームは強い 創価大OB・吉田正城さんが箱根を通して学んだこと (3ページ目)
【吉田響の最後の箱根を目一杯応援したい】
榎木監督、チームメイトたちと(右から4番目が吉田さん)。写真/本人提供
3年間の主務の経験は、今年、社会人になった吉田さんの人生にどのように生かされると感じているのだろうか。
「先輩に『適材適所が大事』と言われたのですが、チームを円滑に動かし、駅伝で結果を出すにはすごく大事だなと思いました。これは会社組織でも必要なことだと思っています。コミュニケーションや"報連相"もあらためて大事だなと感じます。あと、人のためによかれと思ってやったことが伝わっていなかったり、後輩の育成も大変だったので、大学のうちにそうした経験をできたのは自分の財産になっています」
今シーズン、創価大は好調だ。出雲駅伝、全日本大学駅伝ともに4位と安定した結果を出している。國學院大、駒澤大、青山学院大の3強に割って入るのに、あと一歩のところまで来ているが、榎木監督は「勝ちたいという意欲が足りない」と語っていた。
「箱根は、勝ちたいと思うメンバーが10名揃わないと勝てないです。僕らの時は、嶋津さんや葛西(潤)(現・旭化成)さんは勝ちたいという気持ちで走りきっていましたが、なかには力が追いついていなくて空回りした選手もいました。焦りやプレッシャーを感じてしまう選手もおり、それが結果にも出てしまいました。箱根で勝つためのことを各自がしっかりできるかどうかがポイントになりますが、今年はやってくれると思います」
吉田さんが今年のチームで一番気になる選手は、エースの吉田響(4年)だという。
「響が東海大からうちに転校してきた際、選手との相部屋だと緊張するだろうから、主務の自分が受け入れて同部屋になり、いろいろな話をしました。響は前回、箱根出場がかなわなかった志村(健太)キャプテンを付き人に希望していたのですが、スケジュール上、そのリクエストに応えられず、運営管理車から『ゴールで志村が待っているから最後まで走りきるぞ』と伝えさせてもらいました。(5区区間9位で)不甲斐ない走りをしたと号泣していましたね。
今年はさらに意識が変わって、全日本後に『チームを勝たせたい』と涙ながらに話をしてくれました。今回はどの区間を走るのかわからないですが、響の最後の箱根を目一杯応援したいと思っています」
吉田さんは、吉田響が走る姿を目に焼きつけるために現地に赴く。エースとチームが箱根でどんなレースを見せてくれるのか、楽しみにしている。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。
3 / 3