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箱根駅伝2025 2年前の駒澤大「三冠」達成時の主将・山野力は、田澤廉ほか多士済々のチームをどうまとめたのか? (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【箱根直前に体調不良者が続出】

 出雲を制し、寮に戻るとチーム内に勢いのような大きなうねりを感じた。

 「出雲は、メンバー以外は寮の食堂でテレビ中継を見るんですけど、ケガで走れなかった篠原(倖太朗)(現・4年)が、自分たちが帰ってきた時に『みんな、すごくかっこよかったです。自分も出たい気持ちが高まりました』と言ってくれたんです。同じことを言う選手も多かったので、いい流れができたなと思いました」

 全日本も制し、いよいよ残すは、箱根だけになった。だが、そこから田澤をはじめ、主力が体調を崩すなど、チームに危機が訪れた。

 「箱根まで1カ月を切る段階で、主力が(体調不良で)バタバタと倒れたので、大八木監督(現・総監督)も元気がなかったですね。でも、奥さんに『あんたがしっかりしないでどうすんの』と言われて、いつもの監督に戻りました。さすが監督の奥さんだなあと思いましたね(笑)。チームとしては、結果的に4人ぐらいダメになって、田澤も本調子ではなかったですし、円はようやく戻ってきたばかりで正直、箱根はあとひとりでも欠けていたらヤバかったと思います」

 駒澤大は箱根を制し、史上5校目の三冠達成を実現した。

 山野は駒澤大卒業後、九電工に入社し、競技を継続している。2年目となる今年はキャプテンになり、チームを率いる立場になった。大学と実業団でのキャプテンの存在、役割にどんな違いがあるのだろうか。

 「キャプテンの存在は大学と実業団では、かなり違いますね。実業団は陸上が職業なので、選手個々のモチベーションが下がることはないですし、適当にやっている選手はひとりもいないので、自分からあれこれ言うことはほとんどないです。大学よりも年齢の幅がありますが、九電工は優しい先輩ばかりですし、風通しもいいんですよ。現実的にはキャプテンという仕事も大学ほどなくて、日々の練習でしっかりと先頭に立って、3年の時の田澤がやっていたように練習や試合で見せていくという感じです。そういう意味では大学の方がキャプテンとしては大変でしたね(笑)」

◆インタビュー・後編>>「三冠」達成時の主将・山野力が見る今季の駒澤大 「今、篠原(倖太朗)は苦しいかもしれないけど...」

■Profile

山野力/やまのちから
2000年522日生まれ、山口県出身。宇部鴻城高校時代は全国大会への出場経験なし。駒澤大学に進学後、大きく力を伸ばす。箱根駅伝では2年時に96位(総合優勝)、3年時に94位、主将を務めた4年時には93位(総合優勝)と、二度の総合優勝に貢献した。現在は九電工所属。

著者プロフィール

  • 佐藤 俊

    佐藤 俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。

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