検索

箱根駅伝2025 國學院大・平林清澄と山本歩夢の絆 「4年目に総合優勝」と信じてきた道のり (2ページ目)

  • 杉園昌之●取材・文 text by Sugizono Masayuki

【3年目の経験を力に変えて】

 2年時になってもつば競り合い続け、ふたりそろってチームの主軸に成長。三大駅伝でも主要区間を走り、結果を残してきた。2年目の箱根駅伝は平林が2区で区間7位と踏ん張って襷をつなぐと、山本は3区で区間5位と力走した。

 3年目はともに副キャプテンとなり、さらに飛躍していくはずだった。しかし、2023年度は『明と暗』に分かれてしまう。平林は伊勢路の7区で区間賞を獲得し、箱根路では2区で区間3位。名実ともに学生長距離界のトップランナーになったが、山本は苦しんだ。夏合宿の後半で故障し、歯車が狂う。伊勢路の2区では区間11位とブレーキを起こし、11月末には右の大腿骨を負傷。箱根駅伝の出走も断念するしかなかった。

「3年目は空回りしたところもありました。故障中に平林との差もどんどん広げられて」

 それでも、4年目は心身ともに落ち着いて取り組んできた。春先から故障や体調不良に悩まされたが、大崩れはしなかった。夏合宿の途中から徐々にコンディションを上げ、10月の出雲駅伝は2区で区間5位にまとめた。11月の全日本大学駅伝ではつなぎ区間の6区を任されると、三大駅伝で初の区間賞を獲得し、初制覇に大きく貢献。区間新のタイムを出し、MVPにも輝いた。

 絶対的なエースの平林とともに強い國學院を足でけん引しながら、チームづくりにも心を砕く。副キャプテンとして、主将の平林を献身的にサポート。すべてが順風満帆だったわけではない。一時期は平林の求めるストイック過ぎる取り組みに同期がついていけず、不穏な空気が流れたこともあったようだ。そのときも、山本は陸上一直線に突き進む相棒から離れず、そばで支えてきた。

「常に上を目指す平林の陸上観を大事にしてほしかったんです。何があっても、僕は理解者であることを伝えました。箱根駅伝で総合優勝を目指すうえでは、絶対に必要だと思ったので。國學院のなかで、最も経験値が高いのは平林です。1年生のときからほとんど故障することなく、すべての駅伝で結果を残していますから」

 外からは見えない壁を乗り越え、いまはチーム一丸となり、最終目標に向かっているという。山本自身、苦労を重ねて、人間的にも成長してきた。

「3年目の経験が生きていると思います。精神的に間違いなく強くなりました。スタートラインに立てば、誰にも負ける気がしません。気持ちだけではなく、足もついてきています。いままでにないくらいよい練習を積めているので」

 底抜けに明るい表情からは状態のよさが、ひしひしと伝わってくる。1年時から平林と一緒にジョグをするたびに話していたことを、ふと思い出す。

「『4年目に箱根駅伝で総合優勝しよう』と言い続けてきましたので」

 故障中に掛けられた熱い言葉もよみがえってくる。

「俺は歩夢と一緒に優勝したい。待っているから」

 そして、いま三冠に王手をかけ、叶うと信じてきた夢を実現しようとしている。4年前と比べると、可能性は比較にならないほど高まっているはずだ。

著者プロフィール

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る