箱根駅伝のエースの理想像を元東洋大・相澤晃が語る「スッと抜いて、相手の心を折る」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

――キャプテンとして周囲に気を配りつつ、エースとして走るのは負担が大きかったのでは。

「監督に、人間的に成長するためにもキャプテンをやってくれと言われたんですけど、小3から陸上を始めて、それまでキャプテンはやったことがなかったんです。それにひとつ上の小笹(椋・小森コーポレーション)さんがキャプテンをしていた姿を見ていて、きついなぁって思っていたので自分がやれるのかなって思っていました。でも、走りで引っ張っていくことからスタートして、仕事的には途中から最上級生全員がリーダーのように動いてくれたので、だいぶ助かりました」

――エースとしての責任感は、3年の時よりも一段と増した感じでしょうか。

「4年の全日本の時かな、僕が負けたらチームが負けるみたいなことが言われていたんですけど、そのとおりというか......駅伝は僕がしっかりと走り、区間賞を獲ることが大前提になっていたので、自分が走らなきゃっていう気持ちはすごく強かったです」

 練習で、相澤は常に先頭に立って走り、チームを引っ張っていた。ポイント練習では他の選手には絶対に負けられないという気持ちで、緊張感をもって臨んでいたという。

――練習の時点から他選手に負けられないと意識していたと聞いています。

「そうですね。4年生の時は、本当にその気持ちが強くて、きついところを引っ張ったり、夏合宿ではいつも先頭で走っていました。そこに何か意味があるのかと思われるんですが、僕はすごく大事だと思っています。エースでキャプテンとしてチームを引っ張るという意志表示でもありますし、前で走ることで自分の競技力向上にもつながります」

――日常の積み重ねによって、エースとしての信頼度が増していくということでしょうか。

「僕は、その信頼が大事だと思っています。信頼されないエースなら意味ないと思うんですよ。僕は、大学3年までは、信頼されるようなタイプじゃなかったですし、僕自身も他人に興味がなかった。でも、普段の練習やレースで常に前で走ることで、『相澤さんならやってくれる』『相澤さんが走るから自分もがんばろう』って少しで思ってくれたらいいかなと。それって信頼がないとできないことなので、僕はエースとして100%の信頼度を得られるように意識して走っていました」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る