「2年連続の学生駅伝三冠も大事だけど...」 駒澤大・藤田敦史監督が選手たちの目標に対して伝えた言葉
駒澤大学陸上競技部
藤田敦史・新監督インタビュー 後編(全3回)
今年1月の箱根駅伝で8回目の総合優勝を果たし、史上5校目の学生駅伝三冠(出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝)を成し遂げた駒澤大は、チームの大黒柱だった田澤廉(現・トヨタ自動車)らが卒業してもなお、戦力が充実している。
3月いっぱいで名将・大八木弘明監督が勇退し、ヘッドコーチを務めていた藤田敦史氏が新たに監督に就任。新体制になっても春先からチームは絶好調だ。
今年度は、箱根駅伝第100回大会優勝、そして史上初の2年連続学生駅伝三冠の偉業に挑む。インタビューで今季の意気込みを語った駒澤大の藤田敦史監督この記事に関連する写真を見る
●「三本柱」だけではない戦力の充実
ーー箱根駅伝後の戦績を見ると、今季も駒澤大の強さが光ります。鈴木芽吹選手(4年)、篠原倖太朗選手(3年)、佐藤圭汰選手(2年)の三本柱はいっそう強力になった印象がありますし、全体的に好調ぶりが伺えます。
藤田敦史(以下、同) 私も順調に大八木から引き継ぐことができたと感じる部分もあります。ですが、春先の好調ぶりは、私が監督になったからではなく、あくまでも大八木が指揮をとってきた土台があるからこそ。そこはしっかり自覚しています。
私自身はまだまだ手探りでやっていますので、本当に大変なのはこれからだと思います。夏場を越えて秋の駅伝シーズンを迎えた時が一番大変なので、気を引き締めていかなければいけません。
ーー昨年度出番がなかった唐澤拓海選手(4年)の復活はかなり大きいように思います。
彼はもともと能力が高いので、ある程度の練習ができるようになれば戻ってくると思っていました。自分自身で心の部分のコントロールをするのが難しかったので、寄り添ってあげるというか、しっかり見てあげることが大事だったと思います。
ーーどんな言葉をかけたのでしょうか?
そんなに特別な言葉をかけたわけではなく、その状況ごとに、本人の話を聞いて現在の立ち位置を確認しながら、「こういうふうにしていったほうがいいよ」とか「こういうふうにやっていこう」と話をしています。だから、寄り添うという言葉が適切な気がします。
すごく明るくなりましたよ。5月の関東インカレの時は、初日に自分の出番を終えて(10000m日本人トップの4位)、翌日の5000m予選の日も(出番はないのに)自主的に来ていました。
授業のある平日だったので、他の選手は来させていなかったんですけど、唐澤は1限の授業を受けてから会場の相模原まで来て、仲間のサポートをしていました。そういう姿に、彼の成長を見ました。
昨年度は三冠したチームのなかになかなか入っていけず、悔しかったんだと思います。この1年はしっかりやってやろうという覚悟を感じます。この記事に関連する写真を見るーー今年の箱根を走っていない選手では、佐藤選手と唐澤選手だけでなく、前々回5区の金子伊吹選手(4年)、4月のぎふ清流ハーフで自己ベストの庭瀬俊輝選手(3年)といった選手も好調です。
金子は、前回の箱根では1年生(当時)の山川拓馬にレギュラーを譲る形になり、絶対に山を走りたいという思いがあるはずです。こういった状況を踏まえて、この1年をどう過ごしていくか、方向性を確認しました。
庭瀬は三大駅伝の出走がないので、発破を掛けるために「この1年はチャンスだよ」と話をしています。今は鈴木芽吹たち4年生がチームの屋台骨になっているので順調にきていますが、1年経ったら卒業してしまいます。
今の3年生では篠原が活躍していますが、彼だけに背負わせるわけにはいきません。だからこそ、庭瀬や吉本真啓、亘理魁といった今後主力になってきそうな3年生には、自覚を持たせるための声がけをしています。この記事に関連する写真を見る
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著者プロフィール
和田悟志 (わだ・さとし)
1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。