箱根の名選手がぶち当たるトラック競技の厳しい現実「世界で勝つしかない」 (3ページ目)
明治大4年の箱根駅伝7区で区間賞を獲った阿部弘輝 そんな田村を追うように、今年、住友電工に楽しみな選手が加わった。明治大から入社した阿部弘輝は、先輩からこう言われたという。
「実業団の世界は大変だよ」
阿部は早くから住友電工が第1志望だった。ただ、実業団トップチームの入社基準は厳しい。阿部の場合、大学1、2年の時はまだ住友電工に入るレベルには達していなかった。だが3年時に大きく飛躍することになる。
「関東インカレの5000mで3位になり、日本選手権の5000mでも入賞することができました。また1万m(八王子ロングディスタンス)でも27分台(27分56秒45)を出すことができた。これがきっかけになって、上の世界で戦える自信と意識が芽生えました」
自信と覚悟を持って、実業団で競技を続けることになったが、住友電工を選んだのはどういう理由だったのか。
「大学の時と練習のやり方が同じだったんです。自分で考えて競技に取り組めるのがすごく魅力的でした。理想のランナー像は、長い期間、高いレベルで通用する選手になることなんです。住友電工はその目標を達成できるチームだと思いました」
4月に入社したが、コロナ禍の影響で練習が制限され、会社もリモート勤務になった。阿部自身、4月からの3カ月で人間関係を築き、仕事で必要なこと学び、さらに練習スタイルを確立してく予定だったが、大きくつまずいた。
6月に入ってようやくチームメイトと練習できるようになり、7月にはレースにも参加した。思うような結果は残せなかったが、課題を持って夏合宿に入ることができた。
「チームとして活動できるようになってからは、流れというか、ルーティンを整えることができました。個人的には、夏合宿を経て10月ぐらいにようやくスタートラインに立てたという感じです」
住友電工の環境はすばらしいが、陸上界を取り巻く状況は種目によって大きく異なる。100m走の短距離やマラソンは人気が高いが、トラックの5000m、1万mはまだまだ注目度が低い。トラックを主戦場にしている阿部は、そのことについてどう感じているのか。
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