2020.05.22

桐生祥秀が日本人スプリンターの
意識を変えた日。「世界と勝負する」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

東京五輪&パラリンピック
注目アスリート「覚醒の時」
第8回 陸上短距離・桐生祥秀
日本インカレ陸上 男子100m決勝(2017年)

 アスリートの「覚醒の時」――。

 それはアスリート本人でも明確には認識できないものかもしれない。

 ただ、その選手に注目し、取材してきた者だからこそ「この時、持っている才能が大きく花開いた」と言える試合や場面に遭遇することがある。

 東京五輪での活躍が期待されるアスリートたちにとって、そのタイミングは果たしていつだったのか……。筆者が思う「その時」を紹介していく――。

 2017年9月9日の日本インカレ男子100m決勝。桐生祥秀は日本人初の9秒台となる9秒98で優勝した。その勝利は、高校3年の13年4月29日から背負い続けてきた重荷から、ようやく解放され、桐生がスプリンターとして新しい一歩を踏み出した瞬間だった。

 高校1年で国体少年B(高1と中3が出場)で優勝し、翌年の高2の国体少年Aでは10秒21の日本ジュニア新で優勝。その1カ月後には10秒19まで記録を伸ばしていた桐生は、この時点ではまだ関係者に注目されるだけの存在だった。

 それが、高3で出場した織田幹雄記念大会で一変。桐生はこれが初めてシニアの選手たちと競うレースだったが、その走りに会場はざわめいた。