2019.03.13

神野大地、東京マラソンの内幕。
なぜ今回は腹痛が起きなかったのか

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sportiva

神野プロジェクト Road to 2020(27)

東京マラソン(後編)

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 東京マラソンは、気温5度、冷たい雨が降るなかでスタートした。

 神野大地は、先頭を行く2分56秒前後のペースメーカーではなく、3分のペースメーカーについた。多くの選手がその背後につき、集団は30名程度の大きな塊になった。しばらく順調に見えたが、15キロを超えた給水地点で異変が起きた。

「みんな取りたいので前の集団からスピードを落として給水によっていくんですよ。すると全体が縦長になり、前とうしろの差が開くんです。しかも、この給水を取る時に僕はペースダウンしたので、さらに前と差が開いてしまった。その瞬間、『アー終ったかな』と思いました」

MGCに向けてエチオピア、ケニアでトレーニングを積むという神野大地 選手は給水ボトルを取るとまた加速していく。神野も8番のボトルを取って前に追いつこうとしたが、なかなかペースが上がらない。16キロを越えると口を開き、喘ぎながら走っている姿がプレスルームの大きなモニターに映し出された。

「もしかして腹痛か?」

 そんなことを思いながら見ていると、神野が集団から落ちていった。モニターを見ている人たちがざわつき、「あぁー」という落胆の声が上がった。

「正直、自分もヤバいと思いました(苦笑)。あそこで遅れると絶望ですもんね。腹痛が起きたわけでもないのに、なぜあそこでキツくなったのか。あとで心拍数を計った時計を見てみると、その時は心拍数が199になり、レース中で一番数値が上がったんです。たぶん、離されて焦ってしまったのと、浅草付近は2回カーブがあるんですが、うまく回れず、さらに焦ってしまった。そこで心拍数が一気に上がり、キツくなったんだと思います」

 だがこの時、神野は非常に冷静な判断をした。遅れるとランナーは心理的に前を追いたくなる。だが、神野はここで我慢した。それは過去の経験が生きたからであろう。苦しいなか、無理して走ると必ずと言っていいほど腹痛が起きるか、もしくは後半にダメージが残った。ここで無理に前を追えば、さらに状況が悪くなると察知したのだ。