自分専用ドリンクや練習の改善。服部勇馬の探究心が生んだ強い走り (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 設楽悠太(ホンダ)が出す前の日本記録保持者だった高岡寿成も、「目指していたのは1km3分ペースを体にしみ込ませ、無意識な状態でも一定のペースで走れるようにすることだ」と話していた。無理なくそのペースを維持できる走りを作り上げる感覚は同じだ。

 それに加えて今回は、服部がマラソン練習に対する意識を変えたことも相乗効果を生んだ。

 昨年の8月に右足の踵骨(しょうこつ)を疲労骨折して以来、4カ月間走れない時期が続いた。そんな中で走りの意識を変え始めた服部は、5月に走ったプラハマラソンで、2時間10分26秒で5位だったものの、「1km3分2~3秒ペースだったら何とか維持できるイメージ」を得ることができたという。

 今年の7月には、アメリカのボルダー合宿に参加したことが意識を変える大きなきっかけになった。アジア大会で金メダルを獲得した井上大仁((MHPS))らの練習を見たり、話をする中で、自分のマラソン練習に対しての考え方が甘かったと感じた。

「これまでのマラソンでは3カ月間の練習の中で40km走は3回くらいしかやっていなかったんですが、今回は3カ月半前から40kmを7回と45kmを1回やりました。またそれだけではなく、120分ジョグや150分ジョグも40kmの回数くらいはやっていたので月間の走行距離も平均で(以前より)300kmくらい増えました。それをやってきたことで今回は、35~36km地点を走っているときに『やってきたんだから』という自信を持てたのだと思います」

 40kmなどのポイント練習だけではなく、その間に行なうジョグにもじっくりと取り組めたことで体や足作りがしっかりでき、ケガをしなくなった。そんな練習をしっかり継続できたことで底力を上げながら、求める走りの感覚を体の中にしみ込ませる結果にもつながった。

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