箱根に向けて東海大に朗報。人生初の試練を乗り越え、阪口竜平が復帰 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文・写真 text&photo by Sato Shun

 スタート直後に前に出ていくと5キロはトップで通過した。

「調子に乗ったなと思いましたね。時計は全然見ていなくて、見たらきつくなると思ったので無心で走っていました。13キロ地点で1回、先頭集団から離れたんですが、(中島)怜利から『阪口、がんばれ』と言われて踏ん張れたし、あいつが離れた時は『怜利、つけよ』とお互いに声を掛け合い、励まし合いながら走ってゴールできた。本当によかったと思いましたし、ホッとしました」

 阪口は62分32秒で7位、自己ベストを更新した。

 故障で苦しんだ阪口、出雲駅伝3区でブレーキになった中島。苦しんだふたりが箱根駅伝に向けてサポートし合って結果を出した。ゴールした直後、阪口が人目もはばからず、涙を見せたのは、苦しんだふたりがお互いをサポートし合ったことで1つの山を越えた安堵感もあるが、ここまでの悔しさ、苦しさが脳裏を駆け巡ったからでもあろう。

「とりあえずホッとしました。今までは箱根がボヤっとした目標で、自分が本当にそこにいけるかどうかの自信がなかったんです。でも、結果を出せて今までやってきて良かったなと思いましたし、やっと自分が箱根で活躍して、箱根で優勝するというのが現実味を帯びてきました。これで満足することなく、箱根で結果を出すことを第一に考えてやっていきたいと思います」

 今年の年始、阪口は箱根駅伝で2区を走った。

 神奈川大学の鈴木健吾、青学大の森田歩希(ほまれ)に一時は追いついたが、10キロを越えると離されてしまった。レース後、芦ノ湖湖畔で阪口は自分の不甲斐なさに悔し涙を流した。それ以来、2区でリベンジするという強い気持ちを持って練習に取り組んでいた。

「2区は自分がいきたいですね。たぶん一番きついんですよ。昨年、走って本当にキツかったんで......。その2区を走るつもりで練習していれば、結果的に2区を走れずに、どこの区間を任されても区間賞を取るような走りができると思うので、2区を走る準備をしていきます。そして今年こそチームに貢献したいです」

 阪口は、決意を秘めた表情でそう言った。

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