100m王者は山縣亮太。9秒台連発の中国勢にアジア大会で勝てるか (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 そんなふたりに対し、ケンブリッジ飛鳥(ナイキ)の準決勝の走りは、スタートで同走の桐生に先に行かれて硬さが出ていた。

「体の状態がよかったので、準決勝では狙いすぎたかなというのがありました。後半も足が後ろで回っているような感覚だった」

 終盤でグイッと伸びてくるケンブリッジらしい走りは不発で、10秒24の2位通過にとどまった。

 そんな状況で迎えた決勝を制したのは、不安のない走りをした山縣だった。

 桐生とケンブリッジが4レーンと5レーンで並び、6レーンに小池祐貴(ANA)、7レーンに山縣で、8レーンは多田修平(関西学院大)という配置。ケンブリッジと、ほぼ同じリアクションタイムで飛び出した桐生は、スタートは前に出たものの、30m過ぎからケンブリッジに差を詰められる。

 それに対して山縣は、キレのあるスタートで序盤が得意な多田の前に出る展開にして、スムーズに加速。そのまま終盤まで予選や準決勝とは違う、キレと躍動感のある走りで2位のケンブリッジに0秒09差をつけてゴール。追い風0.6mの中、10秒05の大会タイ記録で5年ぶり3回目の優勝を果たした。

「5年前の優勝とは全然感覚が違いますね。やっぱり考えすぎていたところは少なからずあると思います......。重圧がすごくあって。ここまで負けていなかったことが自信になりつつ、プレッシャーな部分もありました。勝ちたいというところで勝つことの難しさを、今年はすごく感じました」

 そう話す山縣は、この日は出場レースが決勝の1本だけだったこともあり、練習を抑えて疲労感もあまりなかったという。

「今日は自分の走るコースや自分の走りにすごく集中でき、周りの選手の出方も気にすることなく、一歩一歩スムーズに足が進んだと思います。(前日に)準決勝では、自分が中盤から失速して10秒19だったのに対して、桐生くんは中盤から伸びて10秒16だったので、タイム差以上の差を感じて気になりました。

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