桐生祥秀が自分でもビックリ。今季初戦の「大失速5位」は良い兆候? (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 そして臨んだ決勝は、予選よりは前半からスピードを上げたものの、まだまだ桐生らしいとはいえないレースとなった。直線から競り合いになったが最後は大失速。追い風0.3で、優勝したショーン・マクリーン(アメリカ)の20秒70に対して、21秒13で5位という結果に終わった。

 土江コーチは「カーブでああいう走りになったのは、スピードが上がりきっていないからですね。もっと最大スピードが上がっていなければいけないのに、あの状態で直線に入ったので一生懸命耐えるという走りになってしまった」と分析する。

 桐生自身も「前半は予選よりいい感じで流れましたが、そこからがヤバかったですね。今日もずっと咳き込んでいるような状態だったので、走っていて呼吸ができないような状態になってしまって。でも走りきれたからよかったです。最後はビックリするような失速だったけど、前半はまぁまぁのいい突っ込みができたのもよかったと思う」と苦笑して振り返った。

 そんな体調でも大会出場を強行したのは、5月12日のダイヤモンドリーグ上海大会への出場が決まっているからだ。海外のトップ選手との対決を経て、20日のゴールデングランプリ大阪では山縣亮太(セイコー)やケンブリッジ飛鳥(ナイキ)、多田修平(関学大)などと戦う100mのレースが続く。そこへ向けて一度レースを走っておく必要があった。

「社会人デビュー戦だったから、いいレースをしたかったし、会場でいっぱい声をかけてくれた小中学生の期待に応えられなかったのは残念でしたが、昨年の9月から期間が空いてしまっていたので。予選もスタートラインに立った時はいらないことを考えたり、練習感覚が抜けていなかったですね。決勝は予選よりはよかったけど、それでも『いこう!』という感じがガッツリ出ているような状態でもなかった。ただ、予選より決勝の方が少し集中力も高まっていたので、この1本を走っておいてよかったと思います」

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