東大生ランナー・近藤秀一が語る「僕が箱根駅伝を走る前に思うこと」 (3ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • photo by Matsuo/AFLO

 近藤は2時間1413秒で走り切った。楽しみにしていた下田との走りは下田の負傷欠場でかなわなかったが、新たな目標ができて燃えずにはいられなかった。

「箱根駅伝に出られなかったこと、東京マラソンを走ったこと、そういう経験が新しい視点をもたらしてくれました。陸上は箱根だけではないのに、今までは箱根ばかり考えて、恥ずかしいくらい視野が狭かったなと。だから学生連合チームの資格が復活したという話を聞いたときも『ああ、そうなのか』という感じでしたね」

 しかし近藤の冷静な思いとは別に周囲は盛り上がった。

「こんなに喜ばなくてもいいですよ、と思うくらいみんな本当に喜んでくれて。その姿をて、もう一度挑戦しよう、この人たちのために今度こそ箱根を走ってせようと思いました。自分のためではなく、みんなの気持ちと一緒に走る。どの競技でもよくアスリートがう周囲への感謝ってこういう気持ちなんだと納得しました」

 近藤は箱根駅伝5区のゴールの先、駿河湾側へ降りたところにある静岡県函南(かんなみ)町で育った。小学3年で陸上を始めて函南中学、韮山(にらやま)高校と進学しても走り続けた。東海大会への出場経験はあるが、全国大会には届かなかった。とはいえ、3年の全国高校駅伝静岡県予選では下田(加藤学園)を振り切り、区間賞を獲得するなど有力選手でもあった。実際に大学駅伝の強豪校から誘いもあった。しかし断った。

「大学で陸上を究(きわ)めて箱根路を走る、というのはひとつの目標。でも僕は勉強も究めたかった。その両方を達成するチャンスがあるのは東大だと思いました。だから浪人覚悟で東大を目指しました」

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