東海大の夏合宿。「駅伝のスパートが
変わる」高地トレーニングに密着 (4ページ目)
上半期、館澤は関東インカレ、日本学生個人選手権、日本選手権の1500mで3冠を達成するなど驚異的な活躍を見せた。7月の欧州遠征後、疲れなどでコンディションを落としたようだが、ポイント練習を見ていると走りに何ら問題はない。
4本目を終えた選手に対して寺尾保アドバイザー(東海大スポーツ医科学研究所)が心拍数などの数字をチェックする。高地トレーニングでの効果を計るためにデータを取っているのだ。
昨年に引き続き、今年も高地トレーニングは東海大の夏合宿の柱になっている。高地で練習すると赤血球やヘモグロビンの量が増加し、酸素運搬能力が上がるので、呼吸や心肺機能が高まり、競技パフォーマンスを向上させてくれるのだ。その効果を調べるために心拍数だけではなく、動脈血酸素飽和度(SpO₂)を測っている。
動脈血酸素飽和度というのは体内の酸素レベルを表すもので通常、日常生活で安静にしていると96~98程度。高地で安静にしていると94程度だという。
寺尾が言う。
「高地で追い込んだ運動をするとSpO₂が下がります。館澤は普通では考えられないですが、60台まで下がりますし、鬼塚もかなり落ちるんです。この運動を繰り返すことで高地トレーニング独自の効果が出て、例えば、ここぞっていう時のラストスパートがきくんです。また、高地でトレーニングをすると、数値が高いところからなだらかに落ちていく。それは持久力がついたということになります。高地トレーニングはSpO₂から見ると、通常の環境では経験できないような低酸素刺激を持続的に受けながら運動することになるので、個人差はありますがパフォーマンスを上げるには非常に有効なんです」
高地トレーニングは、陸上をはじめサッカーや水泳など、多くの競技で早くから注目され、実践されてきた。世界の長距離界のトップランナー、とりわけアフリカのエチオピア勢、ケニア勢の多くは高地の生まれであり、今も主に高地でトレーニングをしている。
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