ケンブリッジ飛鳥に優勝を許した、桐生祥秀と山縣亮太の「ライバル意識」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉/PICSPORT●写真 photo by Kishimoto Tsutomu/PICSPORT

 対してケンブリッジは、5月21日の東日本実業団の予選で10秒10を出していきなり頭角を現してきた選手。もともと200mが強く、13年10月の東アジア大会では、その2ヵ月前の世界選手権で準決勝に進出した飯塚翔太(ミズノ)に競り勝って優勝した。3走を務めた4×100mリレーでは、10秒00を出したばかりの張培萌(ちょうばいほう)を擁する中国を抑え、大会記録の38秒44で優勝する原動力のひとりにもなっていた。

 しかし、その後はケガで低迷。体幹部の強化を図り今年になって復活したものの、世間的にはまだ無名ともいえる存在のため、「本命は桐生と山縣で、ケンブリッジはダークホース」と多くの人が見ていた。

 桐生と山縣にしても、ケンブリッジの爆発力を警戒こそすれ、これまで接戦を繰り返してきたライバルに意識が向くのは自然なことだろう。まして準決勝で0秒03差のきわどい勝負をしていただけに、五輪代表が懸かった日本選手権の決勝となれば、「相手に勝って優勝で代表を決めたい」という気持がより強くなり、力みも出やすくなる。

 ふたりに注目が集まる分、ケンブリッジは、「あわよくば」という楽な気持で挑戦できる。怖いもの知らずのノープレッシャーで結果を出した、昨年のサニブラウン・ハキーム(城西大城西高)にも似た立場だった。

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