【陸上】桐生祥秀ら若き男子短距離陣、好材料を残し来シーズンへ (3ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • pohto by YUTAKA/AFLO SPORT

 だが東アジア大会3日目の4×100mリレーでは、世界選手権で10秒00を出した中国の張培萌(チョウ・バイホウ)と同じ1走を務めた。外側のレーンを走る張との差を詰めて飯塚にバトンを渡して優勝の足掛かりを作り、肉離れの影響はもうなくなっているところを示した。

「去年はロンドン五輪の肉離れが長引いて冬期練習もあまりできなかったけど、今年は冬の間もしっかりトレーニングを積めそうなので。(100m走も含めた)今回の結果を見て、自分の実力はこんなものなんだというのをしっかり肝に命じて冬期に頑張り、自信を持って来シーズンを迎えたいと思います」

 こう話す山縣はリレー後の記者会見の場で、張が日本の大会に来たがっていることを聞いた。

「そうなれば日本は高速トラックですから。そういうところで自分も負けていられないので、しっかり前に出られるようなレースをしなければいけないと思います」と闘志を燃やしていた。

 一方、飯塚もこの大会の200mでは、ケンブリッジ・飛鳥(日本大)に敗れる2位と悔しさを味わった。世界選手権では準決勝に進出しながらも、走りにくい1レーンで思ったような走りができず、その後の練習には身が入っていなかったと反省する。だが4×100mリレーでは初めて2走を任され、中国をしっかり引き離すと、日本に優勝を引き寄せたのだ。

「チームのキャプテンだったのに個人が悪かったから、(リレーでは)しっかり仕事をしなければいけないと思って気合を入れました。今回の中国は強いメンバーで来たけど、それに力で勝ったというのは、来年のアジア大会や再来年の世界選手権に向けてはものすごくいいことだと思います。最近はアジアで勝てていなかったから、東アジアとはいえそのジンクスを破れたのは良かった」

 3走はケンブリッジ、4走は100m3位の大瀬戸一馬(法政大)でつないだ日本の優勝タイム38秒44はレベルの高い記録。全員が学生で日本学生記録を0秒1更新するものだった。初めて組むメンバーでの結果としては上出来だ。

 そんな希望が持てる成果とともに、個人ではしっかりと課題を見つけた山縣と飯塚。来季は桐生と山縣も200mに参戦する予定で、100mだけではなく200mでの熾烈な競り合いからも目が離せなくなる。

 さらに今後は、日本で開催される国際大会にも中国勢が積極的に参加してきそうだ。日本選手と中国選手が入り乱れての9秒台先陣争いで、男子短距離は大いに盛り上がるだろう。

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