【マラソン】瀬古利彦が語る、ロンドン五輪マラソンの見どころ (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato
  • photo by AFLO

「特に男子はケニア勢が抜きんでています。今年の世界ランクは2時間4分23秒で走ったエチオピアのA・アブシェロが1位ですが、ケニアのキプロッチは3年連続して2時間5分を切るなど安定して高いレベルで走っています。オリンピックで必要なのはこうした安定感や経験。エチオピア勢もそれが分かっているでしょうから、レースでは絶対にケニア勢の前に出ないと思います。背後について様子をうかがい、一瞬の勝機を狙うでしょう。しかし実力的にはやはり差があると言わざるを得ません。
アフリカ勢がマラソンで台頭してきたのは90年代から世界各地で賞金レースが増え、走ることでお金を稼げるようになったことが一番の理由。そしてトレーニング環境が整備されて一気に力を伸ばし、世界記録もどんどん更新されるようになりました。今のマラソンではケニアが優勢ですが、前世界記録保持者のハイレ・ゲブラシラシエがいるようにエチオピアの選手も能力は高い。今後、ケニアとエチオピアが今以上に競い合い、世界のレベルを引き上げていくことが考えられます。
女子も、男子ほど世界記録は伸びていませんが、アフリカ勢が強くなっていることは事実。かつて日本には2000年シドニー五輪の高橋尚子さんや04年アテネ五輪の野口みずき選手のように2時間20分を切る選手がいたのですが、今、そこまでの選手はいません。日本女子苦戦の理由はそこにあります」

 そのアフリカ勢に日本勢はどう立ち向かうべきなのだろうか。2012年の記録を見ると男子は藤原が世界ランク48位、女子の重友が18位になっている。しかしオリンピックは各国3名までの出場のため、各国4位以下の選手を除外すると藤原は11位、重友は8位と入賞を狙える位置にいることが分かる。瀬古氏も入賞がひとつの目標ラインとなると考える。

「先ほど申し上げたようにアフリカ勢が中盤から後半にかけて、一気にペースアップすることが予想されます。その時にどう対応するのか。もちろん優勝を狙うのであればそれに反応すべきですが、入賞が目標の場合、無理に付き合う必要はありません。イーブンペースを維持し、終盤に落ちてきた選手を拾う方が得策でしょう。ですからマークすべきはアフリカ勢ではなく、アメリカを中心とした白人選手。自分の理想とするペースに近い選手とともに走り、引っ張ってもらうべきです。
日本のエース、藤原選手は2時間7分台を目標にしているそうですが、それが実現できれば入賞の可能性は高いと思います。そのためには気負わず、周囲に惑わされることなく、冷静に自分の力を発揮することだけを考えるべき。そうしたベテランらしさが出せれば、目標に近づけます。特に男子は世界のトップから差をつけられているわけですから、ここで何としても入賞し、未来に望みをつなげていかなければなりません。今後の日本マラソン界の流れを決める上でも、今回は結果が求められる重要な大会。日本勢の奮起に期待したいです」

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