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走り幅跳びの超人、マルクス・レームは東京パラでも世界記録更新を狙う (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • photo by Ito Shingo/X-1

 レームが目指す高みと願い、それは「最高のジャンパーでありたい」ということだ。それを実現するために、自ら義肢装具士の資格を取得し、メーカーと競技用義足の共同開発に取り組んだり、健常者の大会に出場したりと、挑戦を続ける。彼が唯一無二のブレード・ジャンパーになったのは、「自分に制限を作らない」という信念に沿って努力を続けてきた賜物だ。

 その一方で、レームが健常者の大会で優勝したり、オリンピックへの挑戦を口にするたび、彼の周りで「義足の優位性の有無」について議論が沸き起こる。16年には、「義足が跳躍にどんな影響を与えているかを科学的に調査したところ、助走や踏切において義足は不利に働く」という研究結果が出たものの、結局はリオ大会も、今回の東京大会もオリンピック出場という願いは聞き入れられなかった。

 彼は言う。「僕は仮に義足をつけて有利に跳べたとしても、嬉しくとも何ともない。いちジャンパーとして、世界一になりたいだけなんだ。それに、パラリンピアンである僕がオリンピックに出ることによって、何よりパラリンピックの宣伝になるし、もっと多くの人がパラスポーツに興味を持つでしょう? それができたらすばらしいと思っているだけだよ」

 競技者として真摯に陸上に取り組む彼のアスリートとしての姿は、ドイツ国内でも多くの人のパラスポーツに対する意識を変えてきた。陸上を始めた当初は、身体の一部を失ってスポーツに取り組むこと自体に否定的な見方が多かったという。しかし、今では彼のジャンプを見て「あのくらい俺も跳べる」と言う人はいなくなり、彼と同じように障害を負った子どもたちの憧れの存在となった。

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