道下美里、ブラインドマラソンで世界新も、まだ東京の「金」までの途中 (4ページ目)

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • photo by Kyodo News(競技)、Murakami Shogo(人物)

 20km地点で交代した後半伴走の志田さんは、青山さんから伴走ロープを受け取るとすぐ、「いいペースで来たね」と道下に声をかけた。「その一言で、私の気持ちが変わった。もう一度レースと向き合ったら、いい感じにペースが刻めるようになった。あそこで諦めていたら、(世界新)達成はなかった」と感謝する。単独走だったら、切り替えられず、そのまま失速していたかもしれない。

 山口県下関市出身の道下にとって、防府は慣れ親しんだ地元の大会でもある。沿道からは、「中野さん!」と旧姓での声援も聞こえたという。また10人を超える伴走者や支援者からなる「チーム道下」のメンバーも沿道から、あるいは単独走のランナーとしてコース上から励ました。「30km過ぎからは気持ちを切らさず行こうと、沿道や他のランナーからもらう声援を全部力に変えた。最後はすごく楽しく走れました!」

 4年計画1年目の集大成となるレースで感じた「まだまだ」は、伸びしろの証(あかし)だ。

「東京で金メダル」――。リオのゴールで誓った思いに、ブレはない。好記録もその一歩。最高の笑顔は、まだお預けだ。

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