戦略的プレーが見どころ。車いすテニス「クァードクラス」って何? (2ページ目)

  • 荒木美晴●文・写真 text&photo by Araki Miharu

 そうしたプレーに長けているのが、世界2位のデビッド・ワグナー(アメリカ)だ。胸から下が麻痺している彼は、素早く動けない分、球筋を読み、丁寧なラケットワークで正確にショットを打ち分ける。ミスが少なく、自分がどこに打てば、どうボールが返ってくるのか計算し尽くされたその頭脳プレーには、他国のライバルたちも舌を巻く。パラリンピックのシングルスではアテネとロンドンで銀メダルを獲得。ダブルスの名手でもあり、こちらは電動車いすのニック・テイラーと組んでアテネから大会3連覇を果たしている。

 そんな彼の前に立ちはだかるのは現在、世界ランキング1位のディラン・アルコット(オーストラリア)である。世界トップランカーがエントリーした今月中旬の「ジャパンオープン」(福岡県飯塚市)では、決勝で両者が対決。アルコットが6-4、3-6、6-3のフルセットを制し、大会3連覇を果たした。

 このアルコットには、ワグナーとはまた違うストロングポイントがある。比較的身体の状態がよく、手にテーピングなしのアグレッシブなプレーで試合のリズムを作ることができるのだ。実は、車いすテニスのジュニア選手として活躍しながら、車椅子バスケットボールのオーストラリア代表にも選ばれ、北京パラリンピックで金メダル、ロンドン大会でも銀メダルを獲得している。その後、車いすテニス界に戻り、本格的に競技に取り組むことになったわけだが、車椅子バスケットボールで培ったチェアワークと、左右に伸ばせば1m95cmある長い手から繰り出す強打で、一躍トップの仲間入りを果たした。2015年に全米オープンで初優勝するとその勢いはさらに増し、リオパラリンピックでは単複で金メダルを手にしている。

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