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佐藤水菜がオールガールズクラシックで、誰も仕掛けたくない絶妙なスピードで狙いどおりに優勝 (2ページ目)

  • ハル飯田●取材・文 text by Haru Iida

 そんなふたりの"女王経験者"による対決は、2日目の12R、準決勝で早速実現する。3番手につけた児玉に対して佐藤は車間を空けて5番手でラスト1周半へ。最後方からの久米詩(静岡・116期)の仕掛けに合わせて佐藤が上がっていくも、常に後方を気にしていた児玉が前に入るようにスパート。それならばと佐藤は大外から強襲したが、ゴール線を先に駆け抜けたのは僅かの差で児玉となった。

 準決勝1位通過となった児玉自身が「抜かれたと思った」と振り返るほどの大接戦も、直接対決での先着は大きな意味を持つ。佐藤も「一番面倒くさい位置になって、(仕掛ける)場所もタイミングもなかった」と反省を口にした。1発勝負のレースを除けばここ数年常に1着を並べてきた佐藤にとって久々の2着での勝ち上がりは、十分に波乱と言える出来事だった。

作戦を練って決勝に臨んだ佐藤 photo by Takahashi Manabu作戦を練って決勝に臨んだ佐藤 photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る

【600mのロングスパート】

 そんな布石が打たれた状態で迎えた本番。前日までとはうってかわって風はおさまり、最高のコンディションでレースはスタートする。昨年の決勝に続いて小林莉子(東京・102期)が先頭に立つと、児玉は2番手に。佐藤はその後ろの位置に着けたものの、細田愛未(埼玉・108期)、そして石井貴子(千葉・106期)に次々と並びかけられ、結果的に前日と同じ5番手まで位置を下げた。

 前哨戦の再現かと思われたラスト1周半、打鐘を受けて全体が緩んだタイミングを見逃さず佐藤がスルリと先頭まで躍り出る。反応した児玉、そして梅川風子(東京・112期)も進出を開始するが、佐藤は後ろを振り返りつつペースを落とさず先行し続ける。突き放すでもなく緩めるでもなく、追った梅川をして「誰も出たくないスピード」と言わしめるコントロールでレースを一気に掌握した。

 残り1周、まだ時折後ろを見ている。残り300m、まだ見ている。残り200m、遂に梅川が踏み込みかけると、佐藤も反応し猛然とラストスパート。残り600mから先頭に立ち続けたとは思えないような底力でスピードを上げると、一瞬並んだかに思われた梅川も、内を狙って仕掛けた児玉も、最後は佐藤の背中を見つめるしかなかった。

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