先輩からの助言で確信 目前に迫るGⅠの優勝候補筆頭・坂口楓華が辿り着いた「無欲」という新境地 (2ページ目)

  • ハル飯田●文 text by Haru Iida

坂口はガールズケイリン界で存在感を増している photo by Takahashi Manabu坂口はガールズケイリン界で存在感を増している photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る

【無欲でちゃんと生きる】

──昨年は最後まで賞金ランキングでのグランプリ出場権争いを繰り広げましたが、GⅠであるオールガールズクラシックに勝利すれば、早くも出場決定となりますね。

「自分がGⅠを獲ったらどうなるだろう」と考えると、もしかしたら目標を達成して気が抜けてしまうんじゃないかと不安に思う気持ちもあります。ただ、賞金ランキングを争ってグランプリ出場をかけて戦う状態から、早く抜け出したい気持ちはありますね。

 でも、私はGⅠでも普通開催でも目の前のレースを目標に同じモチベーションで臨むようにしています。賞金ランキング争いも、サボらずに"ちゃんと生きていれば"結果が出る世界だと思っています。

──やはり優勝を意識しますか?

 実はお正月に「今年はとにかく無欲でいこう」と決めたんです。昨年末のグランプリでの敗戦(5着)が悔しすぎて号泣しましたし、そこから年末年始は立ち直れないくらい落ち込んでいたんです。

 その後は遊びに行って強引にリフレッシュしましたが、落ち着いて気持ちの整理をしてみると、去年のグランプリでの敗因は勝ちたい気持ちが強すぎて空回りしてしまったことだと思ったんです。だから、今年はGⅠだからと優勝を狙う気持ちは持たないようにしています。

──勝ちたい気持ちが強すぎると、具体的にどのようなデメリットが生まれるのでしょうか。

 もともと自分から動いて目標を掴み取りたい性格なんですが、レースで「自分なら勝てるはずだ」とプレッシャーをかけすぎてしまうと、動かないといけないタイミングで動けなくなってしまうんです。去年は競輪祭(女子王座決定戦)の決勝とグランプリの2回、動かずに負けてしまったことが自分で許せませんでした。それで、欲が強すぎたんだなと気づかされました。

──今年はレースに臨む心理状態から、昨年とは違うんですね。

 ずっとビッグレースで勝てていないことを悩んでいたんですが、1月の立川競輪場での開催で(児玉)碧衣さんとお話する機会があったのも大きかったですね。碧衣さんもビッグレースに勝てない時期があったので、その殻を破れたきっかけを思いきって質問してみたんです。すると、「つい忘れてしまうけど、人間は欲が出るとよくないんだよ」と教えてくれました。

 以前は碧衣さんも結果が出なくて悩んでいたそうですが、思いきって「負けてもまた練習すればいいし、まずは何も考えずに臨んでみよう」と考えて走ってみたら、初めて先行して逃げきれたそうなんです。あらためて"欲が出るとよくない"と確認できましたし、ありがたい話をしていただいて、自分も変われたと思います。

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