パリ五輪へ明るい光を灯す「体操・日本女子」新時代の主役たち 宮田笙子、岸里奈、中村遥香らが躍動 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本 勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

【岸は粘り強さを発揮し2位】

54点台の力を備えると言っていい岸里奈  photo by Kishimoto Tsutomu54点台の力を備えると言っていい岸里奈  photo by Kishimoto Tsutomuこの記事に関連する写真を見る

 女子全体を見た場合、宮田に続いた高校生ふたりの出来も大きな収穫だった。

 まずは総合2位に入った高校2年生、17歳の岸里奈(戸田市SC/クラーク記念国際高)は予選4位から決勝は54.231点と盛り返して2位になった。岸は昨年の世界選手権個人総合では日本人トップの11位に入った選手で、さらなる成長の跡を見せた。

「優勝が目標だった」という今回、予選は前半の段違い平行棒と平均台でいい滑り出しをしたが、得意のゆかではH難度の最初のシリバスの着地で大きく跳ねてしまい、場外に出るミスをするなどで演技がまとまらず。最後の跳馬でも着地でラインオーバーの減点とミスが続いた。

「ゆかは練習では出ないアドレナリンが出たというか、調子がよすぎていつもと違う蹴りの高さになり、着地を先取りできなかったのが(ミスの)原因かなと思います。跳馬は少し力みすぎてしまい、ロイター板の後ろを蹴って突っ込みすぎてしまった。気持ちが少し前にいってしまったので、決勝はもっと落ち着いて臨みたいです」と悔しさを顕わにしていた。

 田中強化本部長によれば、岸は3月の高校選抜では優勝したものの、足首に痛みを感じていたため、大会直前まで出場を迷っていたという。その影響か、今大会の練習でも少し自信のなさそうな表情も見え、練習不足を不安視していたという。

 決勝も最初の跳馬はラインオーバーで0.1点減点となり、平均台でも予選より0.400点落とす苦しい展開に。しかし、最後のゆかではシリバスの着地で跳ねながらもなんとか耐えて全体2位の13.266点を出し、合計でも2位に上げた。納得できないなかでも最後まで粘りきった結果だった。

「今回の試合前は少し調子が落ちて思うような演技できない部分があったが、試合に来たら調子が上がってきた。調子のアップダウンがあったことが、本来できる演技ができなかった原因だと思います」

 岸は、昨年経験した世界選手権で、日本だけではなく、世界にもライバルがいることを知った。そのなかで自分に求められるのは「自分との戦い」と考えたという。

 NHK杯に向けては、「今回出たミスと着地の修正が課題。あとは気持ち。決勝は自信と余裕を持って演技ができたと思うので、NHK杯でもそれをやって優勝へ向けて挽回したい」と強い気持ちを見せる。

 そんな岸の決勝について、田中本部長は高く評価する。

「自分の力を最後は振り絞って出しきれた感じです。決勝は、自分の力をパーフェクトに出せたというより、本当粘り強く、4種目揃えた形。本来なら宮田選手ともっと競り合えるような力を持っているので、そこに期待したいと思います」

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