吉田知那美が「感慨深い」と振り返る北京五輪 涙するチームを笑顔にした石崎琴美の言葉 (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro
  • photo by JMPA

 でも、決勝のあとはしばらく「なんでうちらって、最後の最後にこうなっちゃうんだろうね」と言い合って、落ち込んで......。すべての感情が悔しさに飲み込まれる寸前でした。銀メダルを持っているのに......。

 私としては「楽しかったという記憶を残したい」という個人的テーマもあったので、負けてしまったけれど、楽しかったとか、銀メダルでもうれしいという満足した気持ちもありました。ただ一方で、チームとして悔しさを共有して、それを抱えて、またみんなと一緒のチャレンジしていきたい思いもあって、すごく複雑な心境だったんです。

 その時に、琴美ちゃんが「この銀メダルをちゃんと喜ぼう」と言ってくれました。

 そのひと言は、ここまでの戦いと首から下げているメダルには価値がある、ということを改めて教えてくれました。そして、(鈴木)夕湖さんは「琴美ちゃんがそう言ったから、今から切り替えて喜ぶ!」と明るく言っていましたが、それは本当にそうで、他の誰でもない、私たちをいちばん近くで見てくれて、一緒に戦ってくれた琴美ちゃんの言葉だからこそ、みんな素直に受け止めて、そこからじわじわと喜びが広がっていった。そんな感じでした。

 また、あのシーズンのチームの合言葉は、ロンドン五輪の競泳日本男子メドレーリレーチームの名言「(北島)康介さんを手ぶらで帰すな」にちなんで、「琴美ちゃんを手ぶらで帰すな」だったのですが、夕湖さんは「じゃあ、略して"ことぶら"だね」と彼女らしさ全開のワードセンスを発揮し、その「ことぶら」は今でもチームの合言葉です。

 これから始まる新シーズンも、琴美ちゃんにたくさんのすばらしいものを持ってもらえるように、チームで頑張っていきます。琴美ちゃん、いつも騒がしい4人と一緒にいてくれてありがとう。これからもよろしくお願いします。

吉田知那美(よしだ・ちなみ)
1991年7月26日生まれ。北海道北見市出身。幼少の頃からカーリングをはじめ、常呂中学校時代に日本選手権で3位になるなどして脚光を浴びる。2011年、北海道銀行フォルティウス(当時)入り。2014年ソチ五輪に出場し、5位入賞に貢献。その後、2014年6月にロコ ・ソラーレに加入。2016年世界選手権で準優勝という快挙を遂げると、2018年平昌五輪で銅メダル、2022年北京五輪で銀メダルを獲得した。2022年夏に結婚。趣味は料理で特技は食べっぷりと飲みっぷり。

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