女子体操・村上茉愛がSNSの誹謗中傷問題で思ったこと。「うまく伝わらないのであれば、 本当に思っていることは発信できない」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by JMPA

 五輪イヤーに入ると、コロナ禍の影響で大会の開催が危ぶまれた。賛否両論が渦巻き、アスリートに対して応援と罵り、貶める言葉の両方が飛び交うなか、東京五輪は開催された。村上は、女子体操団体の演技終了後、涙ながらに誹謗中傷した人たちに向けて発した言葉が、「見返したい」と言うところだけ抜き取られ、炎上騒ぎになった。

「やっぱりアスリートの発信って、すごく影響力が大きいと思うんです。その時、どうしたら人の心に伝わるのかなと自分も考えましたし、その上で発言したのですが、いろいろ反省点もありました。影響力の大きさを考えると、うまく伝わらないのであれば、心のなかから本当に思っていることはもう発信できないと思いましたね。それ以降は、自分のことだけに集中するようにしました。でも、最後は応援してくれる人が増えて、すごくうれしかったです」

 東京五輪ではSNSが改めてクローズアップされたが、女子体操ではウエアのジェンダーギャップを解消する取り組みも見られた。レオタードに向けられた性的な視線を自らの意思で拒否する新たな動きとして、ドイツの女子体操選手は、レオタードではなく、ユニタードで演技したのだ。

「ユニフォームは表現のひとつですし、体操には大事なものです。ドイツの選手がユニタードで演技したということで、今まで悩んできた選手がやりやすいタイミングになったと思います。いろんな意見があったとしても、そうして自分たちで発信したのはすごいなと思いました」

 村上は、自分を表現すること、個性についても気づきがいろいろあったと言う。

「体操は採点競技なので、自分の特徴を活かしていかないといけないんです。自分で言えば見た目から力強そうなので、パワフルで力強い印象に残る演技だと思うんです。結果が出たのもあるんですが、そこの軸がやっぱりすごく大事だなと改めて思いましたね」

 女子はゆか運動で曲が使えることも自分の個性を活かせるところだと村上は言う。

「大学時代から4回ぐらい曲を変えていますけど、今回はビートオンとかヒップホップとかノリがいいのがいいかなって思っていました。監督は、いろんな曲を引っ張ってきて、自分のイメージに近い、自分に合った曲を作ってくれたので、それが銅メダルにつながったと思います」

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る