2020.01.09

目標を失い、引退の不安もあった白鵬が
モチベーションを回復したわけ

  • 武田葉月●構成 text&photo by Takeda Hazuki

【月刊・白鵬】2020年・特別編(前編)

横綱・白鵬にとって、2020年は大事な年になる。
この年にかける熱き思いを、
まずは昨年の戦いを振り返りつつ、語ってもらった――。

 2020年の初場所(1月場所)がまもなく始まりますが、みなさんは、どんなお正月を迎えられたのでしょうか。

 私は年末年始、恒例となっている家族旅行に出かけて、4人の子どもたちとゆっくりとした時間を過ごすことができました。心からリフレッシュできたことで、年明けは1月3日から稽古に打ち込んでいます。

2020年初場所を前にして精力的に汗を流す白鵬 さて、まずは2019年について振り返ってみたいと思います。

 昨年は、ケガに泣かされた1年でした。1月の初場所では、4日目の朝に横綱・稀勢の里が引退を発表し、鶴竜も6日目から休場。ひとり横綱となった私が、その責任を果たさなければいけなかったのですが、前半戦で痛めた足の状態が悪化し、14日目から無念の休場となってしまいました。

 続く春場所(3月場所)では、その無念もあり、また「平成最後の本場所を優勝で締めくくりたい」という思いが強く、かなり気合が入っていました。幸い、痛めていたヒザや足首の状態もよく、初日から14連勝と白星を重ねることができました。

 迎えた千秋楽。1敗で追う逸ノ城が迫っていましたが、私が結びの一番で鶴竜を破れば、通算42回目の優勝を決めることができます。

 ゆえに、私の中では「この一番で決める!」――そんな気迫がみなぎっていました。

 私もすでに34歳。体力的にも、優勝決定戦まで持ち込みたくない、という気持ちも少なからずありました。

 とはいえ、鶴竜との大一番は簡単には決着がつきませんでした。互いに譲らず、1分を越える熱戦となりました。そして、最後は私が下手投げで勝利。全勝で、場所前に掲げた目標を達成することができました。

 ただ、この一番で、私は右上腕を痛めてしまったのです。その瞬間、「あっ(筋が)切れたな」と、すぐにわかりました。

 強烈な痛みに襲われるなか、私は支度部屋に戻って、すぐさま患部をアイシング。何とか痛みを抑えようと試みました。しかし、その痛みは容易に収まるものではなく、脂汗が浮き出るなか、表彰式に臨みました。おかげで、天皇賜杯など、ひとりで受け取ることができませんでした。