ケイン・コスギも苦しんだ。悪天候の「SASUKE」の恐ろしさ (4ページ目)

  • 本田雄士●撮影 photo by Honda Takeshi 協力/TBS


 昨年末に行なわれた第36回大会、僕はそこに至る1年間、ずっと足袋を履いて1stステージの練習をしていました。本番の1stステージは必ず足袋でやる、そう決めていました。

 ところが本番の3週間前に、その決意をゆるがす出来事が起きました。その日は小雨の降る日で、ふと「夜露対策で、足袋の滑り具合を確認しておくか」と普段使用している足袋を持ってきて、自宅近くの壁に張りついてみました。すると、ものすごく滑ってまったく張りつけない!

 これが本番で起こったらどうなるか......僕は非常に悩みました。というのも、足袋はグリップ力において右に出るものはなく、1stステージで摩擦が重要になる「ウイングスライダー」や「そり立つ壁」では有利になります。一方で「湿気に弱い」という弱点をはらんでいます。

 第32回大会で、幾多の選手が夜露で滑って落ちたシーンが脳裏をよぎりました。しかし、本番直前のこの段階で、それまでずっと練習で使ってきた足袋をやめニューバランスにするのか。大げさではなく、数時間悩みました。

「よし、一度冷静になろう」

 僕はとりあえず足袋の滑りテストをしていた現場を離れ、自宅で入浴しました。目を閉じて、頭の中でじっくりと情報を整理。足袋とニューバランスで挑んだ際のメリットとデメリットを思い浮かべました。

 ●足袋
 メリット:1年間練習で使用して慣れている。摩擦が強いので有利
 デメリット:夜露が出た場合は足が滑り、リタイアの可能性が高まる

 ●ニューバランス
 メリット:足袋よりは夜露に強い
 デメリット:足袋よりは摩擦が弱い。1年間練習で使用していないので不安

「足袋の摩擦はとても有利だが、夜露に対する不安は持ちたくない」

 それが自分の大きな気持ちでした。

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