東京五輪の切符は男女残り1枠。リードW杯で見えた代表候補の現在地 (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki


 W杯リード印西大会での楢崎明智は、五輪予選に出場する4選手でただひとり、決勝に進んで9位。ただ予選では、リードでの好成績のために克服すべき弱点もあったと振り返った。

「僕の課題は、ほかの選手にとって遠いホールドを安易に取りにいってしまって、落ちてしまうこと。足をひとつ上のホールドに上げておけば解消できるのに、それを忘れちゃうことが多い。世界選手権もそれでフォールしたし、この予選でもそう。五輪予選までにそこを改善したいですね」

 身長186cmで手足のリーチに恵まれた体型は、ほかの選手たちが苦しむホールド間の距離が遠い課題で武器になる反面、届いてしまうことでのデメリットも生じる。手と足先が離れるほど、フォールするリスクは高まるからだ。

 すでに五輪出場が内定している「兄(楢崎智亜)と一緒に五輪出場」の夢を実現するために、残す1カ月で動きを身体に染み込ませていくことになる。だが、世界選手権後に変更した「登るリズムを遅くする」という課題に一定の手応えを得たこともあって、その表情は明るかった。

 対照的だったのが藤井快。この大会の予選は1本目を高度34+まで到達し、2本目を完登して5位通過と好結果にもかかわらず、予選後は浮かない表情で「感覚的なズレ」を明かした。

「登っていて、『まだ大丈夫』と思っていると、急に腕がパンプしたり、ホールドを取ろうと出した手が目標の場所を外していたり......。頭と身体で感覚的なズレがあるんですよね」

 11手目を取りに動いてフォールした準決勝を、「あれはズレではなく、単なるミスですね」と苦笑い(結果は20位)。狂った感覚の修正が五輪予選に向けての大きなテーマだ。

「長いシーズンなので疲れが溜まっていたり、五輪予選に向けて身体を絞っていたりすることに原因があると思うので、一度しっかり休みを取って、頭も身体もリフレッシュしたいと考えています」

 とはいえ、今季のW杯シーズンは印西大会で終わりを告げたが、藤井には11月7日から10日までインドネシアで開催されるアジア選手権がある。五輪予選までに十分なオフを取れる余裕はないものの、11月30日に27歳の誕生日を迎える藤井にとっては束の間でも休息することが優先事項。3種目での実績は高いだけに、感覚のズレを修正できれば、来年のコンバインド・ジャパンカップまで夢をつなぐはずだ。

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