2019.09.08

鶴竜にモンゴル相撲の経験ナシ。
それでも手紙を送り日本に売り込んだ

  • 武田葉月●取材・構成 text&photo by Takeda Hazuki

 その間、土俵に上がって稽古ができなかったので、「鶴竜の調子はどうなんだ?」と、いろいろな憶測も飛んだようでしたが、名古屋場所の話題は他にもいろいろありましたから、なんとかバレずに初日を迎えました。

 初日の新小結・竜電戦は、もうぶっつけ本番ですよ。だけど、腰痛を抱えていることによって、早く攻めようという姿勢が”吉”と出て、3秒ちょっとで勝負を決めました。

 初日の白星は、何よりの薬です。2日目は北勝富士、3日目は先場所(夏場所)優勝の朝乃山、4日目は以前私の付け人を務めていたこともある小結の阿炎と対戦して、4連勝。狙っていたわけじゃないけど、4日とも5秒以内での白星です。

 こうして、私は初日から12連勝と波に乗り、13日目の相手は新鋭の友風。体格に恵まれていて、勢いのある力士ですからね。警戒したわけじゃないけど、立ち合い、私は頭を低く下げすぎていってしまった。

 あんな位置に相手力士の頭があれば、私だって叩きますよ(笑)。結果、はたき込みで敗れました。まあ、この黒星で、もう一度自分の相撲を見つめ直せたというか、結果的に優勝につながったんだと思います。

 だから、表彰式の時の優勝インタビューでこう言ったんです。

「優勝は、名古屋のファンのみなさんのおかげです!」

 私は、横綱とは毎場所優勝、もしくは優勝争いにからむのが使命だと思っています。ですから、ようやくその役目を務めることができた名古屋場所での優勝は、忘れられないものになりました。

先場所の名古屋場所で7場所ぶりの優勝を飾った鶴竜 モンゴルのウランバートルに生まれた私は、中学生の頃はバスケットボールに夢中でした。当時モンゴルではバスケが流行っていて、白鵬関もそうですけど、ほとんどの少年がNBAファンだったと思います。

 だから、この8月にバスケの日本代表対ドイツ代表戦のスペシャルゲストとして、始球式に招待していただいて、3ポイントシュートに挑戦し、2本目で決められた時は本当にうれしかったなぁ。「大舞台で絶対ミスできないな」と思って、結構練習したんですよ(笑)。