クライマー野口啓代の目に涙。五輪内定でライバルも認めた「すごみ」 (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「あと1年間、クライミングができることがうれしい」と喜ぶ野口は、来夏の現役最後の一戦に向けて、ここから得意種目のさらなる進化と、苦手種目の強化に汗を流していく。

 男女それぞれ20選手で争われる東京五輪に出場できるのは、各国最大で男女各2名。この大会で野口や優勝したガンブレットのほかに、東京五輪の切符を手にしたのは、3位ショウナ・コクシー(イギリス)、4位アレクサンドル・ミロスラフ(ポーランド)、8位ペトラ・クリングラー(スイス)、9位ブルック・ラバトゥ(アメリカ)、10位ジェシカ・ピルツ(オーストリア)。残る枠は「13」。

 そして、日本代表の座は「残り1枠」ある。11月末の五輪予選(フランス・トゥールーズ)や、来年4月~5月のアジア選手権(岩手・盛岡)で日本代表としての五輪出場資格を得る選手が現れれば、来年5月中旬のコンバインド・ジャパンカップ(場所未定)での決定戦で決まる。だが、現れなければ、世界選手権で日本代表2番手の成績を収めた野中の手に渡ることになる。

 野中は昨年の世界選手権で右肩を故障し、手術をすると今大会に間に合わないため、温存療法を選択。今年3月には左肩も痛めた。故障と背中合わせの状態で迎えた世界選手権は、最初の種目のボルダリングで再び肩を痛めたのが響いた。コンバインド決勝ではスピード4位×ボルダリング4位×リード5位と不発に終わったものの、すでに先を見据えている。

「コンバインド決勝の舞台は、緊張感から脈がハンパなくて。スピードはミスが多くて『やらかした』と思いましたけど、『まだチャンスがある』と切り替えて、ボルダーの1課題ずつしっかりと臨んでいました。痛み止めを飲んで決勝に出たので、その反動が(今後)どう出るかが不安ですけど、2位になったことで、五輪予選などを戦わずに来年のコンバインド・ジャパンカップまで時間ができた。肩を手術する時間はないので付き合っていくしかないんですが、しっかり治して、前向きにイチから出直します」

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