金メダル候補・渡部暁斗が強い理由が一読でわかる「深いインタビュー」 (5ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 五十嵐和博(人物)、赤木真二(競技)●写真

「やっぱり、トライ&エラーを繰り返さないとわからないものはありますね。誰かに『これが大切なんだよ』と言われて、今の僕があるのではないんです。『どうなるのかな?』という興味があって色々やった結果、『こうだったんだな』というものが得られる。

 だから今、僕がこれを若い選手たちに伝えようとしても、何も伝わらないと思います。自分で失敗と成功を繰り返しながら、その時の自分の感覚はどうなのかというのを記憶していかなければ辿り着かないことなのかなと思います」

 現在のノルディック複合はジャンプ1本、クロスカントリー10kmで行なわれるが、かつてはジャンプ2本とクロスカントリー15kmを2日かけてやっていた時代もある。渡部は、そんな古いW杯を知っているギリギリの世代なのだ。

 ここまで着実にレベルを上げてきた渡部は、その理由を「どれだけ長い目で見られるかどうかだと思う」と話した。

 もし、ソチ五輪や平昌五輪のメダル獲得だけを目標にしていたら、失敗したくない気持ちが先行して「どうすれば効率よくそこに辿り着けるか」を考えていただろう。そうなれば色々なことに興味を持って試すというプロセス自体が無駄として切り捨てられた可能性が高い。

「『先の見えない道』くらいの感覚で遠くを見ていなければ、そういう生活スタイルやトレーニングスタイルにはなれないでしょうね。それでもやっぱり山頂は見えないです。1回見えかけたと思ったけど、まだ山頂付近をウロウロしている感じです」

 渡部はそう言って楽しそうに微笑んだ。

(つづく)

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