渡部暁斗が今季初V。「ぬるい勝利よりバチバチ戦うレースがしたい」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

 ただ、渡部にとって、いい展開となったものの体調は万全ではなかった。フィンランド入りしてからの練習で、コース上にあった氷片を踏んでコース外に弾かれ、左脇腹を痛めていたのだ。いつ痛みが出るかわからない状況だったため、追いつかれることを想定しながら走っていたという。

「でも意外と走りがよかったみたいで、スキーも滑ってくれたし......。なかなか後ろが追いついてこなかったので、僕も意外と余裕を持って走れたという感じです。でも左脇は途中から痛かったですね。3周目の途中くらいからジワジワ痛みが広がるような感じでしたが、止まらなければいけないほどではなかったです。もし、大きな集団でバチバチな状況で、急激にスピードを出さなければいけなかったら、わからなかったけれど、自分のペースを保つ分には我慢できる痛みだったし、一定のペースを保ってゴールができました。途中から後ろの集団が牽制し合ってくれたのもよかったし、いろいろのものがうまく噛み合った日だったかなと思います」

 渡部を追走した7人ほどの2位集団は、最後の周回に入った時でも互いに「誰か前に出ないのか」と顔を見合わすような状況で、8.6km関門では渡部と43秒差まで開いていた。結局、渡部は2位争いから抜け出したエーロ・フィルボネン(フィンランド)に31秒7差をつけて、W杯10勝目を達成した。

「こういう理想的な展開が毎回できればいいですけど、これはルカ独特で、これだけタイム差が開くというレースはあまりないと思う。風の条件は一定だったけど、ここは飛距離差が大きく出る特殊なジャンプ台なので、こういう形の逃げ切るレースができたのはいいですが、これでクロカンのタイムが1位だったらもっと最高だったと思いますね」

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