内村航平「もう地獄ですね」。薄氷の10連覇は東京五輪への吉兆か

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 築田純●写真 photo by Tsukida Jun

 全日本体操個人総合選手権で、大会10連覇を達成した内村航平(リンガーハット)は「自分の演技ができなかったので、最後の鉄棒が終わったときにはリオ五輪の時のように負けてもしょうがないと思っていました。負けた方が楽になるなと思って......」と話した。ここで勝つと連覇の期待に応え続けなければいけないが、負ければ次からもっといい演技ができるかもしれないと思っていたという。そして、「もう地獄ですね」苦笑する。

接戦の中でもしっかりと勝ちきり10連覇を達成した内村航平(中央)接戦の中でもしっかりと勝ちきり10連覇を達成した内村航平(中央) 8月のリオデジャネイロ五輪以来の試合となった今大会。7日の予選は、最初の種目の平行棒でミスをして13.050点に。次の鉄棒からは立て直したものの、6種目合計が85.350点で、千葉健太、谷川航(ともに順天堂大)、白井健三(日体大)という8歳下の世代の3選手に次ぐ4位になった。

 今季から採点規則の変更が行なわれ、技の難度を示すDスコアが各種目0.5点(跳馬は0.4点)になり、演技の出来栄えを評価するEスコアが重視される傾向が強まった。

 これまでの国際大会では、演技のわずかな乱れでもEスコアが減点される傾向にあったため、内村はそれに対応するために技の難度を下げる構成で臨んでいた。しかしそれだと今季からは、単純計算でDスコアだけでも6種目合計では2.9点低くなり、Eスコアの判定の厳しさまで考慮すると、合計が去年より4~5点低くなる計算になってしまう。

 それでも、決勝になるとやはり内村は安定の演技を見せた。最初のゆかでは、Eスコア8.9点の14.900点で白井に次ぐ2位につけると、あん馬では8.35点、つり輪は8.3点のEスコアで、14点台をキープして滑り出した。

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